緻密な取材力と企画力で、時代を捉える経済誌・ビジネス誌。ビジネスパーソンが主な購読者で、パブリシティ効果も高いと広報から熱視線を浴びる一方、機密性の高い情報をスクープされたりと、時に手強い相手にもなりうる。本特集では、特に注目を集める5誌の編集長が、広報とメディアの理想的な関係について語ります。
ダイヤモンド社 『週刊ダイヤモンド』編集長 田中 博氏(たなか・ひろし)
1965年福岡県生まれ。1988年上智大学卒業。1993年米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院修了。コンサルティング会社、新聞社勤務などを経て、2001年ダイヤモンド社入社、2004年副編集長。2014年より現職。金融業界、建設業界、不動産業界などを担当。
信頼できる広報は
「社内取材力」のある人
広報を通さず取材をする機会も多いのですが、正攻法で情報を得られる、広報との付き合いは大事にしたいと考えています。やはり広報はその企業の顔ですから、対応次第でイメージは大きく変わります。信頼できる広報は、社内にネットワークをたくさん持っていて、我々と同じように社内を取材できる人。情報を持った上で、知らないことは「知らない」、間違っていることは「間違っている」と言ってもらえると信頼ができます。
企業の「意思決定者」に届けたい
1913年創刊の『週刊ダイヤモンド』は、2014年4月、田中博編集長就任と共に編集方針を再定義。それまで40代以上の管理職がコアターゲットだったが、経営の中核を担う“意思決定者”及び、意思決定に関わる人にシフトチェンジした。
「年齢で区切ると40~50代かもしれません、ITベンチャーなら20代も含まれるでしょう。人口減少でビジネス市場はシュリンクしていますが、社会の基盤を担う、『情報に対価を支払いたい』という層は決していなくならない。こういった層をコアターゲットとして、情報を届けたいんです」と田中編集長は語る。
新たなターゲットを見据え、内容も見直した。経済誌としては意外かもしれないが、一時期は、特集テーマの中で、健康や老後、教育問題やお金回りといった個人の生活にすぐに役立つライフスタイル系の話題が、3〜4割を占めるまでになっていた。しかし、「より経営の意志決定に役立つ情報を届けるべき」という、当初の編集方針に立ち返り、企業、産業、経済に関するテーマを大きな柱としている。
「身近な話題に関する特集を組むときでも、その背景にある社会、経済の裏側を解説するようにしています」。
鮮度と「独自性」にこだわり
ニュースの鮮度を重視。
特集は短いスパンで決めます
ニュースの締め切りは木曜まで、特集はだいたい水曜日ぐらいが最終です。特集は4~6週間かけてつくりますが、鮮度を重視するため、ロングスパンで先のテーマを決め込むことはしていません。社会的な事象を受けて変更することもしばしばで、例えば「米中発!金融パニック」(9月12日号)はもっと先のタイミングで考えていたのですが、株式市場が大荒れになったこのタイミングで予定を数週間繰り上げました。
編集部は32人体制。田中編集長以下 …