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本田哲也のGlobal Topics

スパイクスアジアPR部門グランプリはサムスン、自閉症の子ども向けにカメラアプリ開発

本田哲也

サムスンが自閉症の子ども向けにカメラアプリ「LOOK AT ME」を開発。本家カンヌでもサイバー部門でゴールドを受賞した。

「カンヌのアジア版」ことスパイクスアジアが9月9日から11日までシンガポールで開催された。今回のコラムでは、審査員をさせていただいたPR部門の速報をお届けしよう。

今年のPR部門へのエントリーは、アジア各国からおよそ250件。それを47のショートリストまで一気に絞るところから審査は始まる。審査員団はインド、シンガポール、フィリピン、インドネシア、台湾、オーストラリア、日本から集まった8名(ちなみにうち6名が女性!PRは世界的に女性が活躍している)。審査初日に選定した47のショートリストの中から、翌日はブロンズ、シルバー、ゴールドの各賞、さらにゴールドの中からグランプリを選定していく。全員が15年から20年のキャリアを持つPRプロフェッショナルだが、アジア各国の事情は様々。ここで重要になるのが、いわゆる「審査クライテリア(何を重要視して評価するか)」だ。いまやパブリシティ露出やソーシャルでの広がりは当たり前で、まず重要なのはそのPRがビヘイビアチェンジ(行動変容)を起こしたかどうか。一方で、カンヌやスパイクスは「クリエイティビティ」の祭典。そこにクリエイティブなアイデアがなければ話にならない。今回は審査開始にあたって、「PR部門独自のクリエイティビティとは?」が議論され、その結果、「コネクティビティ(=そのアイデアは異なるステークホルダーをつなげることに貢献したか?)」というポイントが焦点となった。

さて、丸々1日をかけた喧々諤々(?)の審査の末(アジアのPR女性はとにかくよくしゃべる)、頂点に立ったグランプリは、韓国のサムスンによる「LOOK AT ME」という作品。コミュニケーション障害を持つ自閉症の子どもたちは他者とアイコンタクトをとろうとしないが、デジタルデバイスには興味を示すという研究結果があった。これに着目したサムスンは、専門医やアプリ開発者などと協業し、自閉症の子どもたち向けのインタラクティブカメラアプリを開発。アプリを通じて、家族や他者とのアイコンタクトをとれるしくみを提供した。その結果、被験者の60%でアイコンタクトが改善し、40%で感情表現にまで改善が見られた。

このキャンペーンは大きく報道され、ソーシャルメディアで話題になる。アプリが韓国とカナダでローンチされるやいなや教育カテゴリーで1位、その後イギリス、北米、ブラジルでも5位以内に入り、アプリは次々とダウンロードされていった。まさに、様々な立場の人々をコネクトし、動かし、世界中で結果を出したアイデアが大きく評価された。そのアイデアは様々な人々を「つなげる」アイデアか?PRキャンペーンの立案にはとっても大事な視点だ。ではまた来月!

本田哲也(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー/戦略PRプランナー。主な著書に『最新 戦略PR 入門編/実践編』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)、共著に『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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