大企業病に侵された広報 役員不正の対応が生む未来〈前編〉
広報として勤めた企業を退職し、たった一人で広報コンサルティング会社を立ち上げた咲良修一。起業から10年が経ち、8人の社員を抱えるまでになったある夏の日、10年前の記憶がふいに蘇る。依頼のない日々を過ごす咲良のもとにかかってきた1本の電話。それは、日本で三指に入る大手自動車メーカーからだった。
「まさかのクライシス発生!あなたならどう対応する?」 小説で学ぶ、危機広報。
広報として勤めた企業を退職し、たった一人で広報コンサルティング会社を立ち上げた咲良修一。起業から10年が経ち、8人の社員を抱えるまでになったある夏の日、10年前の記憶がふいに蘇る。依頼のない日々を過ごす咲良のもとにかかってきた1本の電話。それは、日本で三指に入る大手自動車メーカーからだった。
石巻の川上蒲鉾が商品偽装をしている─。身に覚えのない疑惑とメディアからの問い合わせに戸惑う社長の川上有希。くじけそうな心を救ったのは、従業員の言葉だった。潔白を証明すべく開いた説明の場で、メディアからは偽装を前提とした質問が投げかけられる。1時間半にわたる会見の数日後、真実が明らかになる。
「川上蒲鉾」に、テレビ東北の記者・中丸から商品偽装について問い合わせが入った。不慮の事故で亡くなった3代目社長の夫・川上涼太と幼なじみだという中丸は、「株式会社川上蒲鉾の商品偽装について」と書かれた告発文を見せる。悔しさに震える有希だったが、事務の高瀬真子からの一言で、あることを思いつく。
【あらすじ】宮城県石巻市にある小さなかまぼこ屋「川上蒲鉾」。4代目社長の川上有希は、営業の井沢真也と二人、降って湧いた商品偽装の疑惑に頭を悩ませていた。社長室で一人になった有希は、今は亡き義母・佐知子と夫・諒太の写真に思わず話しかけた。そこに一本の電話が入る。相手は、テレビ東北の中丸という記者だった。
4度目のシステム障害が発生し、仁和銀行広報部の我聞朔太郎らは対応に追われる。さらにそこに、執行役員の千野吾一が、同じ職場の女性行員への殺人未遂容疑で逮捕されたという衝撃のニュースが飛び込んできた。メディアからの問い合わせ電話が鳴り続け、頭取の波多野啓介がようやく記者会見を開くが……。
仁和銀行で4度目のシステム障害が発生。首都圏にある支店と提携ATMが停止する事態となった。それでも頭取の波多野啓介は広報での対応を指示。常務執行役員の龍雅実紀夫が波多野を説得する裏で、広報部長の木船諒太郎らは対応に追われていた。そこに入った一本の電話によって事態はさらに悪化していく。
度重なるシステム障害により、世間から批判を受けていた仁和銀行で不祥事が発生。誠実とはいえない謝罪会見では記者たちの怒号が飛び交う。ようやく落ち着きかけた頃、マイクを手に発言した暁新聞社会部の長谷文太郎という名に会場が静まり返った。そして時は3度目の障害が発生した2022年1月にさかのぼる。
すっかり人通りが途絶えた温泉街・石鍋市の観光協会に勤める大佐古茂と姫川雄太は、街に活気を取り戻すため「3Dアーティスト集団」の穂戸田大我と朝比奈玲らと組んでイベントを開催することを決めた。新しいことを嫌う商店街組合の理事会から何とか了承を取りつけ、いよいよ本番に向けて準備を開始したが......。
温泉地として知られていたものの、バブル崩壊後は人の流れが途絶えてしまった石鍋市。誘客に悩んでいた観光協会の大佐古茂と姫川雄太のもとに、「3Dアーティスト」という集団で活躍する朝日奈玲がある提案を持って訪れる。その企画に大きな可能性を感じた大佐古は、商店街組合の理事たちに提案するが……。
国内で5本の指に入る湯量が売りの石鍋市。かつて多くの人で賑わった温泉地も、バブル崩壊後は人の流れが途絶えていた。観光協会の大佐古茂と姫川雄太、アルバイトの川北夕子は危機感を募らせる。そしてある日、大佐古は商店街組合の理事会である提案をする。それは2日間で1万人を呼ぶイベントの開催だった。