情報の受け手を起点とした発想で、「共感」を生み出すインフルエンサーマーケティングに定評のある3ミニッツ。カネボウ化粧品が創業80周年の節目の年である2016年に、ローンチしたブランド「KANEBO」のプロモーション事例をもとに、共感とエンゲージメントを高める中長期的な取り組みについて聞いた。
徹底的に「体感」を追求したコミュニケーション設計
─「KANEBO」が提唱する「時間美容」を浸透させるべく、どのような取り組みをされましたか。
吉村:「KANEBO」は2016年9月15日、カネボウ化粧品の創業80周年を機に発売したブランドです。ターゲットは「たおやかなひと」。30~40代をコアコミュニケーションターゲットとして「美しい人生」をコンセプトに、当社の3つの知見に基づき開発されています。
ひとつ目が「時間美容」の概念。これは女性の美しさのリズムを見つめることで、適切なタイミングで自らの美しさを引き出す美容のことですが、時に寄り添って変化し続ける肌を80年間研究してきた知見が基盤になっています。2点目は、新しい天然成分や乳化剤などの可能性を長年研究してきた知見。3点目は、化粧品と感性の深いつながりに向き合ってきた感性科学の知見です。
3ミニッツさんとは、「時間美容」の概念を象徴する商品のひとつである「カネボウ フレッシュ デイ クリーム」のプロモーションでご一緒させていただきました。
星野:インフルエンサーの方々に参加をいただき、「時間美容」を体験できるワークショップを開催しました。朝にクリームを使う発想はまだまだ一般的ではなく、新習慣と言えます。「朝は忙しい、面倒くさい」という意識が女性にある中で、それを乗り越えてでも使いたい、と思ってもらえるコミュニケーションを目指したのが今回のイベントです。
インフルエンサーとのパイプの強さはもちろん、スピード感やキャスティング力、会場づくりや見せ方の技術などが揃っていることが3ミニッツさんの魅力でした。
明石:朝の新習慣をデジタル上でどう広げるかがひとつ大きなポイントでした。ユーザーがWebメディアやSNSからこのイベントの記事に接触した際に、瞬時に「朝」の印象を与えることを目指しました。
そのため、植栽があり自然光が入る空間、スムージーなどオーガニック素材を使った朝食のメニューづくり、チェアヨガを組み合わせ、朝クリームを体感するワークアウト、ベッドルームをモチーフにしたフォトブースなど、朝感をトータルで演出するコンテンツづくりに注力しました。
また、インフルエンサーは、「時間美容」という考え方への共感、トレンドをつくり出す力、自分自身の確立したライフスタイルなど、ブランドとのマッチングを重要視して選びました。
星野:朝から自分の肌をきちんとケアできている、良い一日が始まったなと思えるような、お手入れをすることで、女性は前向きな気持ちになれる。そうした機能性以外の価値も含めて紹介することで、「使ってみたいな」と思ってもらえるコンテンツづくりを目指しました。
3ミニッツさんは、インフルエンサーの気持ちをよくわかっていらっしゃるので、情報の受け手がどう思うかを基点に、キャスティングも含めてトータルで施策を組み立ててくださるのが魅力的でした。
吉村:「朝時間クリーム」のイベントは社内でもとても評判が良かったです。スキンケアの新しいコミュニケーションの形にチャレンジできました。
─世の中に美容に関する情報があふれる中で、スキンケア商品に関する企業からのメッセージ発信は難しくなっているのではないでしょうか。
星野:スキンケア商品のコミュニケーション設計は、ますます難しくなっていますね。今、使っている商品がなくなるタイミングでないと新しいものをお買い求めいただけないですし、どう肌に良いのか、誰が良いと言っているのか、香りはどうなのかというところまで調べて購入される商品ですから。そのため、やはりインフルエンサーの「すごく良い」という実感の伴った言葉にはパワーがあります。
「朝時間クリーム」のイベントで手ごたえを感じたので夜時間クリーム「カネボウ ナイト リピッド ウェア」のプロモーションでも、3ミニッツさとイベントを企画しました。朝と違い、夜にクリームを使ってお手入れすることは一般的なので、イベントでは夜のお手入れのポイントをご紹介するとともに、五感をめいっぱいに使って「このクリームは本当に気持ちいい」と徹底的に感じてもらえるようにしたいと考えました。そこで暗闇でリラックスしながらスキンケアをするイベントを考えました。
明石:ディスカッションを通して暗闇をテーマに、光る氷や360度のスクリーン会場など、具体的なアイデアを出していきました。また、暗闇の中では視覚以外の感覚が非常に研ぎ澄まされるという観点で、嗅覚や聴覚などに訴求するコンテンツにこだわりました。
吉村:KANEBOは美容の世界だけでなく、ライフスタイルを含めて提案するブランドです。3ミニッツさんは自社の女性向けファッションマガジンなども手掛けていらっしゃるので、ファッションを含めた切り口で、今までにない会場の雰囲気や使い方を提案してくださり、とても勉強になりました。
明石:「朝時間クリーム」のイベントも同様ですが、スキンケア商品はメイクアップ商品と違って肌に合うか合わないかがとても大事です。そのため、ターゲットに商品を手にとって「体験」してもらうことを重要視し、訴求する情報を設計しました。
「訴求対象者=フォロワー(ファン)」とも言えるインフルエンサーマーケティングでは、フォロワーにいかにして「共感」してもらえるかが重要です。この施策ではインフルエンサーに一定期間商品を体験してもらいその使用感や効果の実感についてフォロワーの方に「リアルな意見」を伝えてもらうことで信憑性のある情報づくりを目指しました。
施策のプランニング時に複数名のインフルエンサーにアンケートを取ったところ、「スキンケア製品は最低でも10日間くらい使わないと自分に合っているかどうかわからない」というデータが取れたこともあり、この施策では「2週間の商品使用」をしてもらい、ブランド・商品を理解してもらえるようにしました。
その上でフォロワーに対してブランド・商品の良さを語ってもらうことが、結果的に「人を動かす」インフルエンサーマーケティングにつながっていく、と考えています。
星野:一歩踏み込んだ質の高い記事を露出させることで、「夜時間クリーム」のイベントも本当にたくさんの方々が「いいね」と共感くださる良いものとなりました。オーガニック投稿より高いエンゲージになった投稿がいくつもありました。また、雑誌の編集者もインフルエンサーの動向をよく見ていらっしゃるので、雑誌への波及効果もありました。
明石:いかにパワーのあるインフルエンサーを使うか、に予算配分を寄せがちですが、KANEBOさんのように、感覚的な部分や本質的な部分を大切にされながら、細部にまでこだわってインフルエンサーとともに取り組む事例は、非常に貴重ですね。またクライアントさまのブランドとインフルエンサーの間の共感をつくるためのコミュニケーション設計を、これからも当社の強みとしていきたいです。
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