ネットを介して要望を聞きながら、顧客に合わせた旅行プランを作成。エリア専門のトラベル・コンシェルジェが、企画・予約・手配までを担当する。旅工房は、独自の組織体制を築いて競争力を高め、新たなマーケットを開拓している。

旅工房では、193人のトラベル・コンシェルジェが旅行プランを作成。日程、予算、訪問場所の数などを個別の事情に合わせて調整できる。
トラベル・コンシェルジュが、一人ひとりの顧客に合った旅の提案を行う。そうしたオーダーメイドの旅づくりを提供するのは、店舗型ではなくインターネット販売が主力の旅行会社、旅工房だ。
旅工房は1994年に設立、2017年4月に東証マザーズへの上場を果たした。高山泰仁会長兼社長は、「オンライン旅行予約サイトが提供している利便性と、従来の旅行会社が持つ柔軟性や相談力。その真ん中に、新しいマーケットがあります」と語る。
旅工房には、193名のトラベル・コンシェルジュがいる。一人のトラベル・コンシェルジュが一組の顧客を専任で担当し、電話やメールで要望をヒアリング。その内容をもとに、旅行内容のカスタマイズや旅程の組み直しを行う。そうした施策により顧客満足度を高め、売上を伸ばしている。
「従来の旅行業は、航空会社やホテルからのキックバックが収益源になっていました。そのため、お客さまよりもそうした会社に目が向きがちで、満足度よりも、たくさんの人に飛行機・ホテルを利用してもらうことが重視されていたのです。その結果、安売り競争も起きています。私の中に旅行業界の構造に対する問題意識があり、それがトラベル・コンシェルジュにつながりました」。
トラベル・コンシェルジュを機能させるため、旅工房は独自の組織体制を整えている。既存の旅行会社は、企画・予約・手配を別々の部署が担当する「機能別組織」が主流。店舗窓口のスタッフは、さまざまな国の相談に乗らなければならず、必ずしもその国に精通しているわけではない。一方、旅工房は「方面別組織」になっており、例えば、ハワイへの旅行を希望する顧客には、ハワイ方面を担当するセクションが企画・予約・手配まで一貫したサービスを提供する。
「シンプルに言えば、ハワイを好きな人がハワイを紹介したほうが、説得力は高まります。方面別組織にすることで、担当者に知見が蓄積され、その国に詳しい専門家がオリジナルな旅行商品を企画しやすくなる。他の旅行会社が同様の仕組みを導入しようとしても、それまでの成長を支えてきた機能別組織を壊さなければならず、実現は難しいと思います」。
旅工房のビジネスは、低コスト構造にも支えられている。
「従来の旅行業は、たくさんの顧客を集めるために、店舗を構えたり大量のパンフレットを制作したりして、そこに大きなコストをかけています。それらが不要なだけでも、大きなコストダウンになります」。
旅工房の売上高は225億円で、営業利益は3億円(2017年3月期)。顧客視点に立ち、供給者の論理から脱却する。独自性を磨き、成長を目指している。

旅工房は2017年4月に東証マザーズに上場した。公開価格は1370円。上場初日は終日買い気配で取引が成立しなかった。

旅工房
代表取締役会長兼社長
高山泰仁 氏