2016年にスタートし、今回で7回目の開催を迎えた「デジタル時代のブランド戦略研究会」(オプト、宣伝会議、マーケティング研究室の共催)。今回は「運用型広告」をテーマにデジタルとマスとの戦略的な連動やコミュニケーションについて、広告主企業3社が議論を交わした。
一人ひとりのモーメントを捉える広がる、デジタル広告の可能性
7回目となる研究会に参加した企業は森永製菓、明治、松竹の3社。テレビCMを始めとするマス広告を活用しながらも昨今、デジタル施策の可能性を模索してきた企業だ。
研究会はオプトの松田清氏による講演からスタート。
デジタル広告はリアルタイムで成果がわかるため、打ち手を変えながら目標の到達に向けて改善を続けていけるのが強みとした上で「デジタル広告の存在感が増し、マス広告と同等に扱われる時代へと変わってきている。運用型広告は効果を追い求めるテクニック論を中心に語られがちだが、その本質はユーザーにとってフレンドリーな広告を、テクノロジーを使って実現するという点にある。この特性を考えると、ブランディングを始め、企業にとっての活用の可能性は広がるのではないか」と話した。
続いて行われた各企業によるディスカッションでは、まずマスとデジタルの適切な投資配分をどう考えるかというテーマが話題に。「ユーザーに広告塔になってもらい、低バジェットでムーブメントを起こす動きがある」(オプト 中野宜幸氏)という流れの中で、各社から課題としてあがってきたのがマス広告とデジタルの相乗効果を生み出す組み合わせ方だ。
さらに「流通企業との棚割り交渉に際しては、今もテレビCMの投下量が求められる。デジタルに予算をかけたくても、店頭への配荷量を確保することを考えると、思い切ったシフトができないのがジレンマ」(明治 河原健二氏)という声があるように、大手メーカーにとっては単純な広告の効果だけでは、メディア投資の判断をできない側面もある。
それに対し「お客さまに届けばメディアは問わない。マス広告を打つほどの予算がなければ、デジタルだけでプロモーションするなど柔軟に対応している」(森永製菓 佐藤実氏)といった判断の仕方も。「映画業界では評判や口コミのつくり方で動員数が大幅に変わる。予算に応じてマスとデジタルをマルチで掛け合わせている」(松竹諸富謙治氏)という取り組みからは、デジタルへの予算配分の目安として、評判の可視化が必要だとの意見も出た。
続いて議題に上ったのが、運用型広告のリアルタイム性を生かした新しいコミュニケーションの可能性だ。「チョコレートのような商材は、その日の気温といった気象条件が、売上に大きな影響を与える。また購入時と食べるときではシーンも異なるため、お客さまのモーメントを捉えることができるデジタル広告に期待する面がある」と河原氏。
また佐藤氏からは「ウイダーinゼリーの購入動機は体調の変化と密接な関係がある。例えばインフルエンザの罹患数に応じて広告を打つといった試みもしている」といった事例が提示された。リアルタイムで変化するユーザーの事情にいかに対応するかが各社の大きな関心事となっていることがわかった。
また諸富氏からは「テレビCMを流した直後にCMと連動した内容をツイート。テレビCMとSNSの連動で、話題の拡散を狙っている」とSNSの活用の事例が話された。
スマートフォンの浸透でデジタル広告は、これまで以上にその時々、一人ひとりのモーメントを捉えることができるようになっている。その中で運用型広告の活用の可能性の広がりも見えてきた。こうした環境下でのマスとデジタルの組み合わせ、その最適解を模索する各社の挑戦はこれからも続いていきそうだ。
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