この10年、現場で挑戦を続けてきた35人の実務家の皆さんが考える広報の仕事の醍醐味とは? 企業はもちろん、自治体や大学まで、あらゆる場面で広報の力を実感したというエピソードも満載です。未来への提言、読者へのメッセージもいただきました。
日本パブリックリレーションズ協会
1978年に早稲田大学法学部を卒業し、凸版印刷入社。トッパンアイデアセンターに配属され、以来企画・プロデュースを担当。94年にNYマーケティング駐在。2006年に広報部長、2013年より広報ディレクター(現職)。2010年より日本PR協会理事を務め、現在は副理事長・広報委員長。
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Q1:広報の仕事における「座右の銘」/その理由を教えてください。
A1:いかにいい仕事をしたかよりも、どれだけ心を込めたかです。私たちは、成功するためにここにいるのではありません。誠実であるためにここにいるのです。/ノーベル平和賞のマザー・テレサの言葉を私が紡いだものです。聖職者である彼女にも神に対して心の葛藤があったそうです。広報は内には経営者と社員の間に、外には会社と社会の間に立つため葛藤は尽きず、つまる所は社会と自分に誠実であることかと思います。
Q2:これまでのキャリアのなかで、最も広報の力を実感したエピソード、仕事の醍醐味や面白さ、やりがいを感じた経験を教えてください。
A2:日本PR協会が公益に貢献した人を顕彰する「日本PR大賞 パーソン・オブ・ザ・イヤー」です。2012年度の受賞者は、東日本大震災を契機に多くの外国人が日本を離れる中、「私は『日本』という女性と結婚する」として日本国籍を取得されたコロンビア大学名誉教授ドナルド・キーン氏。2013年度は「2020オリンピック・パラリンピック」招致の最終プレゼンテーションを行ったパラリンピストの佐藤真海氏。震災で傷ついた多くの日本人に感動を与えた二人の受賞スピーチに大きな感銘を受け、こうした協会運営に参加できる喜びと誇りを感じました。
Q3:この先10年の間に、広報の仕事に求められるスキルを教えてください。(3つまで)
A3:(1)コミュニケーションデザイン(2)ヒューマニティ(3)クリエイティビティ
Q4:過去10年の「広報」の役割の変化。これからの企業・社会における「広報」の意義や役割とは?
A4:広報の原義はパブリックリレーションズであり、広く社会・ステークホルダーとのより良い関係(リレーション)をつくることがその目的であると考えます。企業活動が社会的責任のCSRから共通価値の創造のCSVにシフトしていくにつれ、企業広報においてもますます、社会的視点と公共性をもった情報発信が求められてくると思います。同時に広報活動におけるリレーションもメディアだけでなく、協働・協創のために様々なステークホルダーとのリレーションを築くことが必要不可欠となると考えています。
Q5:「広報会議」読者、これからのPR・広報の仕事を担う皆さんへメッセージをお願いします。
A5:広報の道には終わりがなく、高見に上れば上るほど今まで見えなかったことが見えてくる。実務だけでなく広く人間としての幅を広げることが大切で、そのためには政治・経済・文化・芸術・スポーツなど興味と関心を広げて、多くの本を読み、体験することが必要。人間力を高めながら創造力を養ってください。