この10年、現場で挑戦を続けてきた35人の実務家の皆さんが考える広報の仕事の醍醐味とは? 企業はもちろん、自治体や大学まで、あらゆる場面で広報の力を実感したというエピソードも満載です。未来への提言、読者へのメッセージもいただきました。
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帝人 コーポレートコミュニケーション部長1986年帝人入社。工場と本社で労務管理を担当した後、98年に広報部へ。広報課長、広報部長を経て2011年広報・IR室長。組織再編を経て2013年より現職。大学やセミナーでの講師、パネリストなど数々の講演実績がある。2012年には経済広報センター主催「企業広報賞」で「企業広報功労・奨励賞」受賞。 |
Q1:広報の仕事における「座右の銘」/その理由を教えてください。
A1:心掛けとしては「ブレない軸を持つ」ということ。常に目指していることは「情報発信力強化によるコーポレートブランド価値の向上」。/ポジティブな発信においても、ネガティブ局面の対応においても、判断や行動に一定の軸を持ってブレないことが、周囲の共感や信頼につながると思う。また、自身が「情報発信量×メディアリレーション×情報発信戦略」と定義している情報発信力の強化こそ、広報最大のブランディング施策であると思う。
Q2:これまでのキャリアのなかで、最も広報の力を実感したエピソード、仕事の醍醐味や面白さ、やりがいを感じた経験を教えてください。
A2:十数年前、企業認知や実像理解の不足に問題意識を持ち、広報・宣伝・IRの3機能が一体となって取り組んだ結果、情報発信件数や株価が上昇し、企業認識度や企業イメージが大きく改善。その成果は当時、日本パブリックリレーションズ協会のPRアワードで部門賞を受賞した。また、それを契機に波状的な発信で「◯◯の帝人」の訴求に取り組み、ダイバーシティなどイメージが定着したテーマで相乗的に大きなメディア露出を獲得しているのはその成果の一端であり、誇らしい。メディアリレーションでは、誤報を巡ってあるメディアと対峙した際、我々のために自社内で戦ってくださった方がおり、親友となった。こういう素晴らしい出会い、そして信頼関係構築が何とも言えない醍醐味である。
Q3:この先10年の間に、広報の仕事に求められるスキルを教えてください。(3つまで)
A3:[1]信頼につながるコミュニケーション能力
[2]体系化および見える化の能力
[3]ツール(言語、ウェブなど)を使いこなす能力
Q4:過去10年の「広報」の役割の変化。これからの企業・社会における「広報」の意義や役割とは?
A4:かつてはメディアに情報を発信して露出を目指す狭義の広報が一般的な捉え方であったと思う。その後、ステークホルダーの多様化、メディアの多様化や影響力の変化、発信方法やツールの多様化などが進む中、ブランディングが重視され、幅広いコミュニケーション先に対し、幅広い手段を駆使して、戦略的にブランド価値を高めることがミッションになったと捉えている。また、コーポレートコミュニケーションの名のもとに担う範囲も広がる傾向にあるが、抱えるすべての機能をもってブランド価値向上に向かっていく時代だと感じる。今後はグローバル化やデジタル化などの環境変化が加速する中、オウンドメディア活用など、さらなる差別化展開により企業価値向上に資することが求められるだろう。
Q5:「広報会議」読者、これからのPR・広報の仕事を担う皆さんへメッセージをお願いします。
A5:インターナルブランディングの基本は「社員一人ひとりがコーポレートブランドを形成している」ということだと思います。それと同様に、社会において、各企業・団体において、「広報」の価値や評価を高めていくのは、広報パーソン一人ひとりのやる気と前向きな行動です。同じ広報パーソンとして、ともに精一杯頑張っていきましょう!