この10年、現場で挑戦を続けてきた35人の実務家の皆さんが考える広報の仕事の醍醐味とは? 企業はもちろん、自治体や大学まで、あらゆる場面で広報の力を実感したというエピソードも満載です。未来への提言、読者へのメッセージもいただきました。
クレアブ・ギャビン・アンダーソン 副社長 / 山形大学 特任教授 |
Q1:広報の仕事における「座右の銘」/その理由を教えてください。
A1:人生、七転び八起き/どんな仕事でも、まずやってみる。7回転んでも8回目で成功すればいい。そのプロセスで知恵も勘も磨かれる。
Q2:これまでのキャリアのなかで、最も広報の力を実感したエピソード、仕事の醍醐味や面白さ、やりがいを感じた経験を教えてください。
A2:トヨタが米国にて品質問題で危機に直面した際、米国から主要記者を招へいした。最初は、記者も疑念を持って会社を見ていたが、現場を見せ、議論を重ねるにしたがって信頼関係が形成されていった。最後は、トヨタを完全に信用し、米国に帰っていった。文化の違い、民族・歴史の違いはあっても、人間は誠意をもって語れば理解しあえる。「透明性」「現地現物」「face to face」ほど強いものはない。 彼らが、米国帰国後に書きだした記事は、それまでのものから180度異なるものとなった。この「透明性」を最優先せよと指示を出したのは社長、記者招へいを決めたのは広報部。この連携が極めて重要ということでもある。
Q3:この先10年の間に、広報の仕事に求められるスキルを教えてください。(3つまで)
A3:[1]社会の流れを読む力 [2]経営分析能力 [3]トップ・スピーチ作成能力
Q4:過去10年の「広報」の役割の変化。これからの企業・社会における「広報」の意義や役割とは?
A4:企業は、利益を上げるだけでなく、企業行動そのものが社会に貢献すべきものと「企業に対する社会からの期待」が変化してきている。広報の役割は、そうした社会の期待に対し、企業の行動を透明性をもって説明することである。また、この「社会」という定義も「グローバル社会」であり「多様性のある社会」と範囲が急激に拡大している。これらすべてを念頭においた広報活動が必要となってきている。その媒介ツールとして、メディアがあるが、従来のメディアに加え、自社メディアであるウェブサイトやSNSも重要なツールとなってきている。社会からの理解が得られれば、それもSNSで拡散される。企業の持続的成長に大いに貢献する。
Q5:「広報会議」読者、これからのPR・広報の仕事を担う皆さんへメッセージをお願いします。
A5:近江商人の「三方よし」の教えに見られるように日本では企業広報の精神が、江戸時代から存在した。欧米に負けない日本独自の企業広報論を構築していっていただきたい。『広報会議』という雑誌が10年も続いたということは、その素地があるということだ。現場を担う皆さまが議論を戦わせ、世界をリードしていただきたい。