この10年、現場で挑戦を続けてきた35人の実務家の皆さんが考える広報の仕事の醍醐味とは? 企業はもちろん、自治体や大学まで、あらゆる場面で広報の力を実感したというエピソードも満載です。未来への提言、読者へのメッセージもいただきました。
すかいらーく CEOオフィス広報グループ ディレクター 同志社大学卒。アリゾナ州立大学大学院MBA。石油会社・IT業界・外食産業でマーケティングに従事。アップル、マクドナルドなど外資系企業を経て、2013年よりすかいらーくに勤務。のべ16年広報を含むコミュニケーションに携わる。
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Q1:広報の仕事における「座右の銘」/その理由を教えてください。
A1:Changing the world,one person at a time.(80年代にアップルが掲げたスローガン)/パーソナルコンピュータを送り出したアップルは、一人ずつに働きかけることで世界を変革するというビジョンを打ち出した。マスメディアを惹きつける技を邪曲とはしないが、一人の心に響く言霊で「宇宙にへこみ」を残すような気概を持ちたい。
Q2:これまでのキャリアのなかで、最も広報の力を実感したエピソード、仕事の醍醐味や面白さ、やりがいを感じた経験を教えてください。
A2:1997年、倒産寸前に追い込まれ奈落の底から這い上がろうと、瀕死の会社がブランドキャンペーンを展開。自らを奮い立たせる意味も込めて、企業理念の原点に立ち返る宣言をした。“Think different”のテーマのもと、広報を含むコミュニケーション部門で送り出したメッセージが一人の心の重荷を負った少年の心を捉えた。少年は自ら命を絶とうとの想いを克服し、その父親から感謝の手紙が会社に届いた。コミュニケーション責任者を集めた会合で手紙が読み上げられたとき、共感を呼ぶメッセージが持つ力に確信が芽生え、自分の立ち位置が固まった。
Q3:この先10年の間に、広報の仕事に求められるスキルを教えてください。(3つまで)
A3:(1)インテグリティ(2)ストーリーテリング(3)打たれ強い
Q4:過去10年の「広報」の役割の変化。これからの企業・社会における「広報」の意義や役割とは?
A4:過去は、メディア露出の拡大が主な目的であった。近年の広報は、経営戦略の立案の段階からブランド強化のための社内外コミュニケーションフレームワークとロードマップを組み込む形で参画し、戦略・施策の実行の一翼を担う位置づけに。広報は、戦略ストーリーおよびシナリオに基づき、危機管理も含めステークホルダーに対するコミュニケーションをオーケストレートする役割を担う。ここ数年、技術の革新と相まって、SNSを融合したバズやバイラルの活用が重要となり、多様化する新たなコミュニケーションの手法・スタイル・チャネルを取り込み、ステークホルダーのエンゲージを含む価値創造が核となるPR3.0のステージへ移行。
Q5:「広報会議」読者、これからのPR・広報の仕事を担う皆さんへメッセージをお願いします。
A5:心に浮かぶままに書いてみると自分ができないことばかりです。望むらくは、広報のプロとメディアのプロが、露出のためのスピンづくりや他媒体に抜かれない見出しづくりに固執せず、ソーシャルメディアを融合して、活き活きした世界と次世代のコミュニケーション「PR10.0」を構築する提唱者となっていただきたいです。