この10年、現場で挑戦を続けてきた35人の実務家の皆さんが考える広報の仕事の醍醐味とは? 企業はもちろん、自治体や大学まで、あらゆる場面で広報の力を実感したというエピソードも満載です。未来への提言、読者へのメッセージもいただきました。
鹿島建設 広報室 次長 財部浩司(たからべ・こうじ)1992年鹿島入社。建設現場のIT化などの情報システム業務を担当後、2001年に広報部門へ。報道担当を経て、2012年から社内報『月報KAJIMA』を手掛ける。同誌は社内報コンペティションなどにて、高い評価を得ている。 |
Q1:広報の仕事における「座右の銘」/その理由を教えてください。
A1:用なき人に用あり/当社の創業家二代目・鹿島岩蔵が残した言葉です。「いまは直接関係の薄い人でも、いつか巡りめぐって自分や仕事に関わる人になるかもしれない。丁寧に接していれば、それが思わぬ方向に広がることもある」という意味。広報の仕事をするうえでの金言です。
Q2:これまでのキャリアのなかで、最も広報の力を実感したエピソード、仕事の醍醐味や面白さ、やりがいを感じた経験を教えてください。
A2:「社内を取材できていない広報マンのことは信用できない」と、ある記者さんから言われたことがあります。広報担当として駆け出しのころでした。情報を咀嚼し、平たく説明をしたつもりでしたが、結局は伝聞にすぎなかったのです。その後、取材とは、情報収集とは何かを真剣に考え、取り組んできました。ある事を発信しようとすれば、相当な量のインプット情報が必要になるのです。いま社内報を担当して、この言葉の重さを改めて実感しています。仕込んできたことが大きく報道されたり、社内報が高く評価されたりといった華やかなエピソード以上に、広報業務の基礎となる考え方をいくつも教えてもらったことが、良き経験となっています。
Q3:この先10年の間に、広報の仕事に求められるスキルを教えてください。(3つまで)
A3:(1)Vitality(2)Intelligence(3)Personality
Q4:過去10年の「広報」の役割の変化。これからの企業・社会における「広報」の意義や役割とは?
A4:十数年前を振り返ると、広報の勉強会などでは危機管理に加え、経営機能としての広報の役割や、インターネットを広報メディアとしていかに活用していくかという話を耳にすることが多かったように記憶しています。その後、ソーシャルネットワーキングサービスの登場とも重なり双方向コミュニケーションの重要性などが議論されていました。ただ、私たちを取り巻く環境が大きく変化しても、根幹となるのは、社会を見る目、そしてトップや社内各層が何を考え、何に悩んでいるかを知ろうとする洞察力です。それを忘れなければ、時代が求める役割に対して、柔軟に対応していけると考えています。
Q5:「広報会議」読者、これからのPR・広報の仕事を担う皆さんへメッセージをお願いします。
A5:抽象的な表現となりますが、物事をしっかりと見つめ、その本質や、奥底にあるものを見抜こうとする力をお互い磨いていきましょう。そうすれば、何を伝えるべきかが見えてくると思っています。