この10年、現場で挑戦を続けてきた35人の実務家の皆さんが考える広報の仕事の醍醐味とは? 企業はもちろん、自治体や大学まで、あらゆる場面で広報の力を実感したというエピソードも満載です。未来への提言、読者へのメッセージもいただきました。
ココノッツ 代表取締役 君島邦雄(きみしま・くにお)1972年外資系製薬会社入社、90年大手医療機器会社入社。広報部門を立ち上げ、広報室長としてPR、IR、社内広報などを展開。2008年ココノッツを設立。著書『広報入門』(共著、宣伝会議刊)ほか。 |
Q1:広報の仕事における「座右の銘」/その理由を教えてください。
A1:オーソドックスに、真摯に、そしてフレンドリーに。/広報活動に創造性は不可欠ですが、奇をてらっても成功しません。真っ当で地道な努力を続けることが成果に結びつきます。また、社会に対してもメディアに対しても誠実かつ親しく接することで、よりよい関係をつくることができると考えています。
Q2:これまでのキャリアのなかで、最も広報の力を実感したエピソード、仕事の醍醐味や面白さ、やりがいを感じた経験を教えてください。
A2:これまでとはまったく異なる発想の製品が開発されました。製造設備も従来とは異なるので、コストが高くなりすぎると工場の人たちばかりでなく役員たちも口を揃えて製品化には大反対です。しかし、開発した若い技術者の話を聞くと、開発ストーリーも面白く、画期的な新製品になり得ると確信しました。そこである新聞に取材を働きかけたら、一面のコラムで報道してくれました。その日の朝から社長のもとに電話が殺到しました。「これは社会貢献にもなる製品ですね」「ぜひ製品化してください」。その瞬間、社内で反対を唱える人がいなくなりました。その製品はいま多くの人たちに使われ、輸出もされていると聞いています。
Q3:この先10年の間に、広報の仕事に求められるスキルを教えてください。(3つまで)
A3:(1)倫理観(2)表現力(聞くスキル、話すスキル、書くスキルを含む)(3)口のかたさ
Q4:過去10年の「広報」の役割の変化。これからの企業・社会における「広報」の意義や役割とは?
A4:この10年間に次々に新しいマーケティングPRの手法が開発され、多様化してきました。マーケティング活動における広報のポジションはほぼ確立したと考えてよいでしょう。企業広報の分野では、企業ブランドの確立が叫ばれましたが、逆にブランドを毀損した企業が目立ちました。広報がブランドマネジメントにどのような役割を果たし、どのような効果が期待できるのか、いまも暗中模索の状態です。また、マーケティングPRでも企業広報でも、カタチだけではない真の社会との対話ができているのか、いま一度問い直す必要があると考えます。
Q5:「広報会議」読者、これからのPR・広報の仕事を担う皆さんへメッセージをお願いします。
A5:広報は面白くやりがいのある仕事です。その目指すべき方向は二つ。広報の専門性を高め、専門家としての地位を確立すること。もう一つは、広報を専門家だけのものにせず、経営の重要な要素、企業に不可欠な業務として普遍化させること。矛盾するようですがどちらも重要です。