この10年、現場で挑戦を続けてきた35人の実務家の皆さんが考える広報の仕事の醍醐味とは? 企業はもちろん、自治体や大学まで、あらゆる場面で広報の力を実感したというエピソードも満載です。未来への提言、読者へのメッセージもいただきました。
NPO法人まちづくり支援センター 代表理事1983年日本大学大学院理工学研究科修了。土木学会、栃木県内の大学教授を経て、2006年からまちづくりNPOを主宰。博士(工学)、国土交通省関東運輸局地域公共交通マイスター、高崎商科大学、宇都宮大学、群馬工業高等専門学校非常勤講師。
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Q1:広報の仕事における「座右の銘」/その理由を教えてください。
A1:「地域の元気は、みんながその気になること」を実践するために、相手の立場を理解し、話を聞き、自ら汗を流し、地道に努力し、明るく楽しく元気よく、そして同じ夢を語る/地域づくりの現場で大切なことは、プレーヤーとなる地域の人たちをいかにその気にさせるかです。地域の現場で必要なのは洗練された理論や手法ではなく、その地域ならではの最適解です。それを探し出し、落とし込むために、地域を理解することを心がけています。
Q2:これまでのキャリアのなかで、最も広報の力を実感したエピソード、仕事の醍醐味や面白さ、やりがいを感じた経験を教えてください。
A2:ゆるキャラ®グランプリ2013で第1位となった「さのまる」の取り組みは、佐野市民に「地域の自信と誇り・愛着」を持たせる仕掛けを展開したものです。「さのまる」を通じて「佐野らしさ」を再発見・再認識し、自ら語ってもらえることを意識し、「草の根広報の力」をつくり上げ、育てたものです。広報の素人であったがゆえに、従来の手法とは異なるアプローチ(協働のまちづくりを応用した仕掛け)で3年間試行錯誤しました。グランプリ出陣式の日、佐野プレミアム・アウトレットで「さのまる」の選挙活動を見ていた若い男性が私に声をかけてきました。「 頑張ってください、さのまるは佐野市民の誇りですから!」。仕掛けの成功を確信した時でした。
Q3:この先10年の間に、広報の仕事に求められるスキルを教えてください。(3つまで)
A3:[1]人(の心)を理解する
[2]自分(の能力)を理解する
[3]夢を描いて(かたちにして)語る
Q4:過去10年の「広報」の役割の変化。これからの企業・社会における「広報」の意義や役割とは?
A4:直接的な広報の仕事に携わってきたわけではないので適切かどうか分かりませんが、従来の広報の役割は「伝える」「発信する」ための役割として単目的化され、「見せる」技術が進歩してきました。時代が変わり社会が成熟し多様性が認められる環境になって、個のつながり、コミュニティづくりが強く認識されるようになってきました。ここに従来のイメージとは異なる広報の意義が存在していると思います。SNSなどのツールが発達する中で「口コミ情報」(正しいかどうか分からなくても)が信頼されるように、広報の役割は「パブリックリレーションズ」から「パースンリレーションズ」による地道な積み上げ式が期待されるようになるかもしれません。
Q5:「広報会議」読者、これからのPR・広報の仕事を担う皆さんへメッセージをお願いします。
A5:人口減少社会にあって、地域の豊かさを創出することが、日本の魅力を世界へ発信することにつながると確信しています。現状ではマーケットは小さくとも、地方こそ広報の力が必要です。既成の枠に捉われずに、地域の人たちと自由な発想でお互いに成長できるようにしましょう。地方は資源の宝庫、魅力的な人が待っています。こういう機会を与えていただきありがとうございました。