この10年、現場で挑戦を続けてきた35人の実務家の皆さんが考える広報の仕事の醍醐味とは? 企業はもちろん、自治体や大学まで、あらゆる場面で広報の力を実感したというエピソードも満載です。未来への提言、読者へのメッセージもいただきました。
オムロン グローバルIR・コーポレートコミュニケーション本部 コーポレートコミュニケーション部長外資系PR会社のコンサルタントや外資系消費財メーカーのコーポレートコミュニケーション部長などを経て、2013年2月から現職。世界110カ国で事業を展開するオムロングループ全体のコーポレートコミュニケーション活動を統括。
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Q1:広報の仕事における「座右の銘」/その理由を教えてください。
A1:“We do not own our brands. Our consumers do.”/1980~90年代にザ コカ・コーラ カンパニーのCEOを務めたロベルト・ゴイズエタの言葉。ブランドは消費者によってつくられるという考え方は、「何を発信するか」ではなく「どう相手に受け止めてもらえるか」という視点をいつも呼び起こしてくれます。
Q2:これまでのキャリアのなかで、最も広報の力を実感したエピソード、仕事の醍醐味や面白さ、やりがいを感じた経験を教えてください。
A2:2011年の東日本大震災の後、首都圏を中心に大規模な電力不足が起こりました。当時の石原慎太郎東京都知事は「自動販売機は電気の無駄遣い」だとして「自販機不要論」を展開。都知事に共感する世論が瞬く間に広がりました。清涼飲料業界にとって自販機は重要な販売チャネル。この世論は大きな痛手です。当時飲料メーカーの広報責任者だった私は、世論を好転させるための統合的な広報活動を展開しました。マスコミやデジタルメディアなどを通じた情報発信に加え、各界のオピニオンリーダーとの直接対話などを実施。マスコミで自販機を擁護する論調が出始めたことで世論も変わり、最終的には自販機に対する規制などを回避することができました。
Q3:この先10年の間に、広報の仕事に求められるスキルを教えてください。(3つまで)
A3:[1]外国語 [2]企画構想力
Q4:過去10年の「広報」の役割の変化。これからの企業・社会における「広報」の意義や役割とは?
A4:過去10年間に起きたデジタル&ソーシャルメディアの台頭、そしてスマートフォンをはじめとする様々なデジタルデバイスの進化は、企業とステークホルダーとの関係さえも変えようとしています。マスコミ対応だけを中心にステークホルダーとのコミュニケーションを考える時代は終わり、直接的な対話(エンゲージメントAをマネージすることがこれからの広報に求められてくるでしょう。誰もが情報発信者になりうる時代において、企業の公式な発言・情報を発信する広報の役割は、ますます重要になってきます。
Q5:「広報会議」読者、これからのPR・広報の仕事を担う皆さんへメッセージをお願いします。
A5:広報の仕事は、企業と社会の両方の動きを鳥瞰する経営の視点が求められるダイナミックで面白い仕事です。その分、様々な困難やチャレンジに直面することが多いと思いますが、旧来のやり方や常識にとらわれず、新しいことにどんどんチャレンジしてください。