テレビ東京出身で経済番組のディレクターを務めていた筆者が、メディアで話題となっているスタートアップ企業の転機に迫ります。
DATA:シェアダイン | |
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創業年 | 2017年5月 |
事業内容 | プロの料理人が4500人以上登録する家庭向けの出張シェフサービス「シェアダイン」・飲食事業者向けの出張シェフサービスの「スポットシェフ」の提供 |
従業員数 | 37名(2023年8月1日時点) |
広報体制 | 2名 |
「サービス開始後すぐに、プレス発表会を開催しました」。そう語るのは、創業当初から現在まで広報を統括している、シェアダインの共同代表・井出有希氏だ。創業直後から経営者自ら、広報に注力してきた。
創業ストーリーで興味を喚起
発表会の翌月、はやくも日経産業新聞、そして日経電子版にシェアダインの特集記事が組まれた。内容は飯田陽狩CEO、そして井出氏の「創業ストーリー」だ。「やはりメディアが関心を持つような、ニュース性のある材料がないと記事にはなりません。そこで、『創業ストーリー』を整理して、記者に伝えるようにしました」。
東京大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券、ボストン・コンサルティング・グループなどを経た後に起業した井出氏。
これだけなら「輝かしい経歴」に過ぎないが、2度のリストラ経験、また育児や仕事などを抱えるなかで飯田CEOとともに「食事の悩みを解決するサービスをビジネスにしたい」という志を持っての起業だった。
起業家としての経歴の信頼感、挫折経験、実体験に基づく問題意識。そして志の高さ。「メディアが好む創業ストーリー」として完璧なものだ。
しかし現在までにシェアダインは、こうした創業ストーリーだけではなくサービスそのものでも多くのメディアに取り上げられている。どのような広報戦略から、多数の媒体への露出につなげたのだろうか。
世の関心を捉えた切り口提案
「世の中の流れに乗ることを強く意識しています。特に創業間もない頃は、記者と話す際には必ず『今、注目しているテーマ』を聞くようにしていました」。
地道なリサーチで得たトレンドや時流を踏まえ、いまでは当たり前となった...