一瞬で崩れ去る企業の信用 最終責任者としての役割〈前編〉
創業から40周年を迎えた大阪データ通信。銀行やクレジット会社などの顧客情報管理やセキュリティシステムの開発を手がけている。静岡支社から大阪本社の広報部へ単身赴任中の香川涼介はある日、同僚の名志村仁と立ち寄ったカフェで、システム開発部の社員の「データが売られている」という言葉を耳にした。
「まさかのクライシス発生!あなたならどう対応する?」 小説で学ぶ、危機広報。
創業から40周年を迎えた大阪データ通信。銀行やクレジット会社などの顧客情報管理やセキュリティシステムの開発を手がけている。静岡支社から大阪本社の広報部へ単身赴任中の香川涼介はある日、同僚の名志村仁と立ち寄ったカフェで、システム開発部の社員の「データが売られている」という言葉を耳にした。
巨大温泉ホテル「彩亭」の改革に取り組むことになったPRプランナーの美河沙理奈。まずは地元でのリアルな評価について聞き取りを始める。その結果に宿泊部長の西野裕也らは眉をひそめる。否定的な言葉や言い訳ばかり出てくる会議の場で、沙理奈は言葉に力を込める。すると、社長の安藤康江が口を開いた。
東北で最も行きたい温泉ホテルといわれる「彩亭」。友人たちと訪れたPRコーディネーターの美河沙理奈は、閑散とした様子が気になっていた。宿泊部長の西野裕也とスタッフの滝田久一郎が集客に頭を悩ませる姿を目撃し、思わず声をかける。すると、西野の希望でチェックアウト前にあらためて話をすることに。
273室の客室を有する「彩亭」は、新型コロナウイルス感染症の影響によって客足が遠のき、苦境を迎えていた。スタッフの滝田久一郎や恵藤耕太がため息をつく中、宿泊部長の西野裕也は変革が必要だと感じていた。宿泊客として訪れていたPRコーディネーターの美河沙理奈も閑散とした宿の状況に違和感を覚え……。
研究所での爆発事故を受けて先輩の川田泰三と熊本へ飛んだ広報の日向龍太郎。記者たちの前で初めての状況説明を終えた直後、社長発見の一報が入る。爆発の原因も分からない状況で、川田は1時間おきのブリーフィングを繰り返す。いつしか日向の言動にも変化が起きていた。そして、記者会見を開くことが決まった。
烏帽子化学の阿蘇研究所で発生した爆発事故。東京本社広報部の川田泰三と日向龍太郎はすぐに現地へ飛んだ。研究所内にいた78人のうち、安否不明者は8人。その中には社長の藤田梁山と研究所所長、そして日向の同期である江藤十夢も含まれていた。研究所から200m離れた規制線の前でメディア対応が始まる。
“開発の烏帽子”と呼ばれるほどの研究開発力を持ち、フィルム加工技術で国内シェアトップの烏帽子化学。ある日、熊本の研究所で爆発事故が発生。コロナ禍で出社制限がされる中、出勤していた広報部の日向龍太郎は急いで羽田空港へ向かう。日向の脳裏には社長と研究所へ向かった同期・江藤十夢の顔が浮かんでいた。
たどころシニアホームズで起きた支配人によるパワハラと職員の自殺未遂。運営企業のシニアホームズでは社長以下、役員たちが見て見ぬふりを決め込もうとしていた。広報部長の和久井喜代太は記者会見を進言するも、決断する者はいない。鳴り続ける電話と疲弊する広報部員たち。和久井はあることの「解禁」を決める。
宮倉耕太郎は職場で同僚の今田麗子が自殺未遂を図ったのを機に、支配人のパワハラを本社に内部告発する。それから3日後、総務部長の加賀丈二から「話を伺いたい」とメールが届いた。本社へ出向いた宮倉は、今田がマスコミに告発状を送っていた事実を知る。そして、パワハラの事実をつかんだ本社の対応は……。
深夜にもかかわらず、廊下には煌々と灯りがともっている。建物内は静まり返っている。日によっては室内から奇声が聞こえてきたり、廊下を徘徊してしまう人がいたりするが、幸い今夜は何事もない。物音ひとつしない廊下を歩いていると身体がザワザワしてしまう。