危機対応は初動がすべて
旭郵便による保険の不正販売問題で「伝言屋の広報」と揶揄された広報室の井野久太は、会社にも自分の仕事にも疑問を感じていた。暁新聞山形支局の古川達彦が書いた記事は全国版の一面で報じられ、井野たちはマスコミからの厳しい追及を受ける。しかし、経営陣たちは善後策を考える素振りさえ見せずにいた・・・。
「まさかのクライシス発生!あなたならどう対応する?」 小説で学ぶ、危機広報。
旭郵便による保険の不正販売問題で「伝言屋の広報」と揶揄された広報室の井野久太は、会社にも自分の仕事にも疑問を感じていた。暁新聞山形支局の古川達彦が書いた記事は全国版の一面で報じられ、井野たちはマスコミからの厳しい追及を受ける。しかし、経営陣たちは善後策を考える素振りさえ見せずにいた・・・。
白に覆われていた山々に目をやると山肌がちらほら見える季節になった。道端には蕗の薹(ふきのとう)が芽吹き始めている。春の爽やかな風がペダルを漕ぐ男の頬を撫でていく。「のどかでいいな・・・・・・」自転車を走らせながら優しい気持ちになると同時に、罪悪感が襲ってくる。
大富士電力を揺るがす癒着疑惑。「事実はない」と言い張る会長・安東清太郎の言葉が会社の方針になりつつある状況に、広報部長の三浜康太郎は呆れていた。広報部の新井田岳は暁新聞の鮫島幸一記者から「詳細な証拠がある」と告げられる。三浜は鮫島を会社に招き証拠資料に目を通したあと、ある相談を持ちかける。
「いつまで同じ言葉を繰り返さなきゃならないんだよ」大富士電力広報部の新井田岳が吐き捨てる。突然の嵐に見舞われたような波状攻撃だった。公共性の高い企業の宿命だが、自然災害時の電力供給や停電事故、原子力発電所でのトラブルや住民運動など、一般企業に比べて記者たちと接する機会は多い。本社の向かい、芝生が美しい公園に横づけされた街宣車から罵声の限りを浴びせられ、それを取材しようとする記者たちと揉みあいになったこともある。
北陸設計で行われた税務署の監査。総務部の竹川慶次は、総務部長の立華要三が何らかの不正に関わっていることに気づく。北陸設計の主要取引先である大富士電力では、広報部の新井田岳が地元新聞の記者から電話を受ける。内容は、同社の役員が日本海市の副市長から多額の金品を受け取っているというものだった。
老舗和菓子屋「華月堂」のPRを任された従業員の美崎真菜。SNSで情報発信し、どら焼きの包装パッケージのリニューアルに取りかかっていた。いよいよリニューアル発売を翌日に控えた夜、美崎はSNSで批判的なコメントを目にして動揺してしまう。社長の月山朔太郎や妻の美奈代に励まされ、ついにその日を迎える。
岡山で150年続く老舗和菓子店「華月堂」。従業員の美崎真菜は、社長の月山朔太郎からPR担当に任命されたばかり。ヒントを得ようと参加した異業種若手交流会で出会った御曹司の言葉に背中を押され、時代に合わせた商品開発やパッケージへの変更を提案する。月山はすぐに提案を受け入れ、美崎の挑戦が始まった。
創業50周年を迎えた文具メーカーBANIWAで粉飾決算が判明。社長の橋川亨が財務部長の富樫雄介に指示し、不正操作された額はおよそ35億円。橋川の背後には香港の投資グループの影。追及に開き直る橋川をよそに、常務執行役員の荻原磯路を中心に広報部長の舟屋総司、広報部員の吾妻晋太郎らは対策を協議する。
昨年、創業50年を迎えた文具メーカーのBANIWA。6月の決算を前に、35億円もの粉飾決済が判明した。役員らは、取引銀行である九州中央銀行から財務担当役員として乗り込み、現在の社長となった橋川亨を追及するが悪びれるそぶりはない。広報部の吾妻晋太郎は、今後のメディアの追及を想像して総毛立っていた。
【あらすじ】日北不動産に大規模な建築法違反の隠ぺいが発覚。広報部課長である脇坂涼太の「膿を出しきらないといけない」という進言を受けて、“日北の天皇”こと藤森作郎社長は経営企画部長の金子健一郎とともに記者会見に出席する。序盤は反省した様子を見せた藤森だったが、その口から出た言葉に記者たちは唖然とする。