綿密なフォーマットから生まれる チャーミングなデザイン
『The Family Meal』という本に出会ったのは、5年ほど前。渋谷パルコにあった洋書店「ロゴス」で見つけました。著者は、スペインの三つ星レストラン「エル・ブジ」のシェフ、フェラン・アドリアさん。以前にエル・ブジの映画も見ていたのですが、そのときはこの本の存在を知りませんでした。
『The Family Meal』という本に出会ったのは、5年ほど前。渋谷パルコにあった洋書店「ロゴス」で見つけました。著者は、スペインの三つ星レストラン「エル・ブジ」のシェフ、フェラン・アドリアさん。以前にエル・ブジの映画も見ていたのですが、そのときはこの本の存在を知りませんでした。
僕は東京藝術大学絵画科油画の出身です。油画の専攻といっても、当時、学生の多くは油画を描かずに映像やインスタレーションをつくっていました。僕も写真を撮ったり、油画の他に自分に合っていることはないかと模索する日々でした。
今年2月に、紙ものを扱うショップ「パピエ・ラボ」の移転後の跡地で、お菓子研究家の福田里香さんによる「エプロンとラッピング」展がありました。福田さんディレクションによるエプロンブランド「ESILIINA」シリーズは、以前に展示会で拝見していたのですが、そのときは買うことができませんでした。そこで今回はと思い、お伺いしたんです。
「面白い映像がある」と、大学生のときに先輩から見せてもらったのが、ケミカル・ブラザーズ「Star Guitar」でした。ひたすら電車の窓からの風景が映っているだけのMV。一度見ただけでは、何が面白いのか全くわかりませんでした。もう一度再生して、なにか仕掛けがあるはずと注意して見ていたら、音楽と風景が完全にシンクロしていることに気づき、衝撃を受けた記憶があります。
木彫りの熊に出会ったのは、佐藤卓デザイン事務所に入社して1年目。社員旅行で訪れたハワイのノースにある骨董屋の棚に鎮座していました。確か300ドルくらい。埃まみれの割にいい値がついているのが印象に残りました。そして翌年、同じ骨董屋に行ったら、同じ場所にこの熊がいました。値段も300ドルのまま。それを見たとき、何か運命のようなものを感じてしまったんです。でも現実的に持って帰るのは難しく、その年もお店で見るだけでした。
JR東日本のキャペーン「TRAiNG」のポスターを見たのは、武蔵野美術大学の短大に通っていた頃。学校の最寄り駅の国分寺駅で、立ち止まって見た記憶があります。女優の田中麗奈さんの写真に切手を散りばめたポストカードのようなデザインは、素直にかわいいと思いました。
大貫卓也さんがデザインした愛知万博のロゴを僕が初めて見たのは、博報堂に入社したときのこと。ADC年鑑で、受賞作品として見ました。当時の正直な感想を言うと、「何だかよくわからない」でした。
3年ほど前から、上野動物園の仕事に携わっています。「真夏の夜の動物園」の告知チラシや年間ビジュアルのポスター、Webの制作など、コミュニケーション全般のデザインを担当しています。
僕が京都工芸繊維大学の学生だった20年ほど前、グラフィックデザインはカルチャーの一つとして華やかな時代でした。当時は渋谷系と呼ばれる音楽シーンとともに、信藤三雄さん率いるコンテムポラリー・プロダクションや、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンに代表されるスイスタイポグラフィーに影響を受けていました。
1970年代後半、世はスーパーカーブーム。小学生だった僕も例にもれず、プラモデルやラジコンに夢中になりました。特に好きだったのは、ランボルギーニやポルシェといったメーカーのロゴ、マルティニやアリタリアといったレーシングカーのスポンサーロゴやカラーリング。