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デザインの見方

作者の人柄をそのままに、明るさと強さを備えた修悦体

佐々木俊

新宿駅にて(2018年)。

修悦体を初めて見たのは、社会人1年目に日暮里に住んだとき。当時、工事中だった駅やその周辺の施設にまでガムテープを使ってつくられた文字が貼られていました。修悦体はすでに知る人ぞ知る存在だったのですが、僕は全く知らなかったので、初めて見たとき衝撃を受けました。なんだかすごいものを見てしまった、と。でも、これがきちんと意図してデザインされているものなのか、最初はわかりませんでした。それからインターネットで検索をして、そのガムテープ文字を佐藤修悦さんという人がつくっていることを知りました。

佐藤さんは、デザイナーではなくて警備会社に勤めていて、工事中の駅で誘導警備をしている方。JR新宿駅の通路改良工事の時に、普段使っていた通路が通れなくなって困っていたお客さんたちを、なんとか案内したいという思いからガムテープ文字で案内板をつくり始めたそうです。

僕が佐藤さんの文字に惹かれたことの一つに、文字の明るさがあります。後日、ご本人にお会いする機会があったのですが、その人柄がそのまま文字に表れています。僕らデザイナーの世界では、作家性云々みたいな話が時々挙がってきますが、この文字はそんな議論をバカバカしく感じてしまうほどの明るさ、そして職人技ならではの強さがある …

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