その人自身が体現された文字
美大を目指して浪人している頃、時々東京の書店に行って、デザインの本を何時間も見ていました。それは僕にとって楽しみの時間でもあり、情報収集の場でもありました。あるとき目に留まったのが、立花ハジメさんのデザインによる「Swatch」の時計。盤面やバンドがタイポグラフィだけで構成されているのですが、文字のエレメントが重ねられていたり、文字そのものが歪んでいたり⋯。これは以前に雑誌で見たことがあり、鮮烈な印象が残っていたものでした。
美大を目指して浪人している頃、時々東京の書店に行って、デザインの本を何時間も見ていました。それは僕にとって楽しみの時間でもあり、情報収集の場でもありました。あるとき目に留まったのが、立花ハジメさんのデザインによる「Swatch」の時計。盤面やバンドがタイポグラフィだけで構成されているのですが、文字のエレメントが重ねられていたり、文字そのものが歪んでいたり⋯。これは以前に雑誌で見たことがあり、鮮烈な印象が残っていたものでした。
僕が影響を受けたのは、川添登さんと師匠の勝井三雄先生が監修した国内初のフルカラー百科事典『現代世界百科大事典』1~3巻(1971年、講談社)です。この事典にはダイアグラムやインフォグラフィックスなどに必要な手法がすべて詰まっているんです。
アメリカから帰国して日本でデザインオフィスも構え、仕事のオファーもそれなりにいただき、周りからは順風満帆に見えていたと思います。でも、その一方で自分の中では何か壊れていくものがあって…。それが2008年頃。それから約10年、短編映画を制作したり、日米を往復しながら一人体制に戻ってデザインを続けてきました。
写真家 細江英公さんが作家 三島由紀夫を被写体とした写真集『薔薇刑』は、1963年に集英社から出版されました。これまでに杉浦康平さん、横尾忠則さん、粟津潔さんが造本と構成を手がけています。以前からこの本の存在は知っていましたが、6万円を超える高価本ということもあり、手にとったことがありませんでした。しかし偶然にも父(浅葉克己)が粟津さんに続く4人目の装丁とデザインを手がけることになり、2015年に『二十一世紀版 薔薇刑』が出版されました。
僕が卒業した日本大学芸術学部デザイン学科は、1919年創立の美術と建築の学校「バウハウス」(ドイツ)の影響を受けています。バウハウスで学んだ建築家の山脇巌さんが日本に帰り、日芸の基礎をつくったと聞きました。僕はバウハウスに行ったことはありませんが、日芸の授業にはその流れを汲んでいるもがありました。
大学に通っていた頃、ライティングスペースデザインという授業で、「正方形を説明せよ」という課題が出ました。正方形の定義、4つの辺がすべて等しく、4つの角がすべて等しい、というものですが、それを説明しようと、私はいろいろな学生に声をかけて、あえてフリーハンドの、さまざまな正方形を集めたんです。最終的にそれらをデータ化し、ストップモーションアニメのように仕立ててプレゼンをしました。そんなときに、書店で偶然出会ったのが、"正方形の版型"の本『線の事件簿』でした。
『The Family Meal』という本に出会ったのは、5年ほど前。渋谷パルコにあった洋書店「ロゴス」で見つけました。著者は、スペインの三つ星レストラン「エル・ブジ」のシェフ、フェラン・アドリアさん。以前にエル・ブジの映画も見ていたのですが、そのときはこの本の存在を知りませんでした。
僕は東京藝術大学絵画科油画の出身です。油画の専攻といっても、当時、学生の多くは油画を描かずに映像やインスタレーションをつくっていました。僕も写真を撮ったり、油画の他に自分に合っていることはないかと模索する日々でした。
今年2月に、紙ものを扱うショップ「パピエ・ラボ」の移転後の跡地で、お菓子研究家の福田里香さんによる「エプロンとラッピング」展がありました。福田さんディレクションによるエプロンブランド「ESILIINA」シリーズは、以前に展示会で拝見していたのですが、そのときは買うことができませんでした。そこで今回はと思い、お伺いしたんです。
「面白い映像がある」と、大学生のときに先輩から見せてもらったのが、ケミカル・ブラザーズ「Star Guitar」でした。ひたすら電車の窓からの風景が映っているだけのMV。一度見ただけでは、何が面白いのか全くわかりませんでした。もう一度再生して、なにか仕掛けがあるはずと注意して見ていたら、音楽と風景が完全にシンクロしていることに気づき、衝撃を受けた記憶があります。