個人活動を資金支援する手段として知られるクラウドファンディング。だが、企業と個人の関係性を変えていく可能性も持っている。クラウドファンディングに見る、未来の企業コミュニケーションのヒントとは?
(左)電通 並河 進(なみかわ・すすむ)
1973年生まれ。電通ソーシャル・デザイン・エンジン クリエーティブディレクター/コピーライター。ユニセフ「世界手洗いの日」プロジェクトほかソーシャル・プロジェクトを多数手がける。
(右)READYFOR? 米良はるか(めら・はるか)
1987年生まれ。慶應義塾大学メディアデザイン研究科修了。Webベンチャー オーマ取締役、2011年日本初のクラウドファンディングサービス「READYFOR?」設立。
人の関係性を流動的に変えていく
並河 米良さんとは、僕が「ごしごし福島基金」という福島の除染活動のための基金を立ちあげたときに、「READYFOR?」を使ったことで知り合ったんですよね。
米良 まだほぼ知名度もなかったときだったので、電通のコピーライターの方からエントリーがあって驚いて。ソーシャルデザインの活動のど真ん中で活動されている方だと知り興味を持ち、お会いしました。
並河 この人といつか何かできそうだと直観しました。「主役の誰かと応援する人たち」という固定化された関係が、「誰もが主役になったり、応援する側に回ったりする」流動的な関係に変わっていくと米良さんは話していて。僕も広告の世界で「お金を出す側と出される側」や「企業と消費者」といった固定化した関係を変えたかったので、重なるところがあると思ったんです。
米良 私は何か表現したり、自らの思いを形にして伝える人が昔から好きで、応援したいと思っているんです。READYFOR?の核も「伝える」ことにあります。Webで誰でも発信できるいまは、いいコンテンツさえあればすごく広まる可能性がある。いいコンテンツを伝える方法とミックスさせて多くの人に伝えることが私のテーマです。
並河 READYFOR?はコミュニケーションのひとつの形だと思います。広告は言葉やビジュアルで伝えるところまでですが、READYFOR?は出資してプロジェクトの実現までコミットするのが面白い。「ごしごし福島基金」では、お金を出した人が、プロジェクトの実現を心から喜んでくれたことに驚きました。お金を出していただいたたうえに喜んでくれるなんて。こういうコミュニケーションの形があるんだな、と。