「これからの企業と生活者のコミュニケーションを変えるのは誰だ?」――宣伝会議 創業60周年の節目の号である本号では、メディア、テクノロジー、地域など、さまざまな切り口で、コミュニケーションの新しい可能性を拓いている40名あまりのクリエイターの活動を紹介します。なぜ、あなたはその活動に取り組むのですか? 自身の活動を通じて実現しようとしていることは何ですか? それによって企業のコミュニケーションはどう変わり、あるいは私たちの未来がどうワクワクするものに変わっていくのでしょうか?――これからのコミュニケーションを考えることは、これからの広告の形を考えることにほかなりません。彼らが語る言葉の中に、次なる広告の発想の刺激やさまざまなヒントが見つかるのではないでしょうか。あるいは、新しいコミュニケーションにチャレンジしたいときのパートナーとして、力強い味方になってくれるかもしれません。
まちの保育園 松本理寿輝(まつもと・りずき)
1980年生まれ。博報堂、フィル・カンパニー副社長を経て、2009年4月ナチュラルスマイルジャパンを創業。「まちの保育園 小竹向原」「まちの保育園 六本木」を運営。今秋には武蔵野市吉祥寺にも開園予定。
子どもとの触れ合いが地域を変える
博報堂を経て「まちの保育園」経営者となった松本さん。焼きたてのパンを提供するカフェなどを併設する小竹向原園と、六本木園の2園を展開する「まちの保育園」は、保護者だけでなく老若男女、近所の大人たちが訪れ子どもの成長を見守る。これまでにない地域に開かれた保育園である。
0~6歳の幼少期は、人間の「人格形成期」といわれ、その期間にどんな人と出会うか、どんな経験をするかが、その人の一生に影響を与えるといわれている。「日本における父親の平均育児参加時間は約20分で、その他のほとんどの時間が母親によって支えられている現状があります。また保育園の先生も98%(09年当時)が女性で、その平均年齢は約30歳です。子どもの一生に大きな影響をおよぼす人格形成期を支える人々が、若い女性に偏りすぎています。子どもには、たくさんの人と関わりながら、経験を広げてもらいたいと考えました」と松本さん。地域に対して開かれた保育園は、子どもたちだけのためのものではない。次なるやりがいを探している団塊リタイヤ世代や子育てがひと段落して余裕が出てきた“先輩ママ”世代と、子育てに奮闘する若い母親世代とをつなぐことで、孤独になりやすい子育ての現場に手を差し伸べることもできる。「まちの保育園」は、子ども、地域、そして家庭にポジティブな影響をもたらす可能性を秘めている。