「これからの企業と生活者のコミュニケーションを変えるのは誰だ?」――宣伝会議 創業60周年の節目の号である本号では、メディア、テクノロジー、地域など、さまざまな切り口で、コミュニケーションの新しい可能性を拓いている40名あまりのクリエイターの活動を紹介します。なぜ、あなたはその活動に取り組むのですか? 自身の活動を通じて実現しようとしていることは何ですか? それによって企業のコミュニケーションはどう変わり、あるいは私たちの未来がどうワクワクするものに変わっていくのでしょうか?これからのコミュニケーションを考えることは、これからの広告の形を考えることにほかなりません。彼らが語る言葉の中に、次なる広告の発想の刺激やさまざまなヒントが見つかるのではないでしょうか。あるいは、新しいコミュニケーションにチャレンジしたいときのパートナーとして、力強い味方になってくれるかもしれません。

電通 菅野 薫(すがの・かおる)
電通 コミュニケーション・デザイン・センター クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト。主な仕事に本田技研工業インターナビ「CONNECTING LIFELINES」「RoadMovies」「AyrtonSenna1989」。クリエイター・オブ・ザ・イヤー審査員特別賞、カンヌ チタニウムライオン・サイバー部門金賞、D&AD Yellow Pencil 等受賞多数。
技術発展が新しい表現を生む
3月に開催されたアドフェスト2014でグランプリ3 部門を含む13の受賞を果たした、ホンダ インターナビ「Sound of Honda -Ayrton Senna 1989-」――テクノロジーを主軸に置きながら、ブランドらしいストーリーテリングを実現した事例であり、テクノロジーを活用した広告クリエイティブを得意とする「クリエーティブ・テクノロジスト」、菅野薫さんの代表作だ。
「広告とは、企業の何らかの行為を通じて消費者に商品やサービスの認知、心理・態度の変容を促すことを目的とするもの。その手段は、テレビCMやグラフィックに限定される理由はなく、データの解析やデータの公開といった行動なんかがあったとしてもいいはずだと思っています。昨年8月にコミュニケーション・デザイン・センターに異動し、クリエーティブディレクターになりました。入社以来、マーケティングを目的としたソフトウェア開発やデータ解析などを専門とする研究開発部門にいましたが、専門として使っている技術自体はほとんど変わりません。近年、クリエイティブ領域にもそうしたテクノロジーやデータの専門性が必要とされるようになってきたことで、活動の場が広がり、自然な流れでここにいます」。