「これからの企業と生活者のコミュニケーションを変えるのは誰だ?」――宣伝会議 創業60周年の節目の号である本号では、メディア、テクノロジー、地域など、さまざまな切り口で、コミュニケーションの新しい可能性を拓いている40名あまりのクリエイターの活動を紹介します。なぜ、あなたはその活動に取り組むのですか? 自身の活動を通じて実現しようとしていることは何ですか? それによって企業のコミュニケーションはどう変わり、あるいは私たちの未来がどうワクワクするものに変わっていくのでしょうか?―― これからのコミュニケーションを考えることは、これからの広告の形を考えることにほかなりません。彼らが語る言葉の中に、次なる広告の発想の刺激やさまざまなヒントが見つかるのではないでしょうか。あるいは、新しいコミュニケーションにチャレンジしたいときのパートナーとして、力強い味方になってくれるかもしれません。

かわだ・とむ
最先端技術を使ったり使わなかったりして、テレビ・音楽・演劇・映画・アート・お笑い・アイドル・書籍・玩具・ファッションなど、さまざまなジャンルを拡張している。発明マネジメント会社(トルク)設立とともに、次は産業ごと文明単位で拡張しようと、あからさまに目論んでいる。最新作に、真心ブラザーズMV『消えない絵』、BUMP OF CHICKEN『BOC-AR』、日本コカ・コーラ『自販機AR』、『情熱大陸』などがある。
物語をARで鑑賞する
人が知覚する現実環境を、コンピュータによって拡張する。いまでこそ人々がスマホをかざし、ARを用いてそこに現れるコンテンツを楽しむ姿はよく見かけるようになったが、AR三兄弟の川田十夢さんがARに注目した2008年当時、まだまだ一般には普及していない技術だった。
もともとミシンメーカーの技術者だった川田さんは、さまざまな変わり種ミシンを開発していた。中でもミシンとインターネットを接続することで、ミシンを使用している職人の使い方や感覚をコピーし、別のミシンにペーストできるというシステムは、さまざまな国でプレゼンをして回るほど先進的な発明だった。