「これからの企業と生活者のコミュニケーションを変えるのは誰だ?」――宣伝会議 創業60周年の節目の号である本号では、メディア、テクノロジー、地域など、さまざまな切り口で、コミュニケーションの新しい可能性を拓いている40名あまりのクリエイターの活動を紹介します。なぜ、あなたはその活動に取り組むのですか? 自身の活動を通じて実現しようとしていることは何ですか? それによって企業のコミュニケーションはどう変わり、あるいは私たちの未来がどうワクワクするものに変わっていくのでしょうか?――これからのコミュニケーションを考えることは、これからの広告の形を考えることにほかなりません。彼らが語る言葉の中に、次なる広告の発想の刺激やさまざまなヒントが見つかるのではないでしょうか。あるいは、新しいコミュニケーションにチャレンジしたいときのパートナーとして、力強い味方になってくれるかもしれません。
丸若裕俊(まるわか・ひろとし)
1979年東京生まれ・シツラエルヒト。2010年、丸若屋を設立。「時代に従うモノづくりではなく、時代を創造するモノづくり」をテーマにプロダクト・プロデュース、プロジェクト・プランニングを日本最高峰に特化した、伝統工芸から最先端工業技術との取り組みまでを行う。
伝統工芸のコミュニケーションを担う
サドルやハンドルが伝統工芸の九谷焼の陶器で作られた自転車や、革工芸の印傳によって作られたiPhoneカバーなど、伝統と現代的なエッセンスをかけ合わせた商品をプロデュースする丸若屋の丸若裕俊さん。
憧れの人として、戦国時代に生きた茶人千利休をあげる。「戦国武将に仕え、お茶によって彼らの心を鎮め、ふと我に返らせたり、大切なことに気づかせたりするのが千利休でした。いまの伝統工芸の世界は、『伝統を継承していくために売上げを伸ばす』といったように目的がすり替わってしまっているものや、趣味的に嗜むだけで目的を失ってしまっているものも多い。僕は創るという面でサポートはできませんが、張りつめた状態を休ませてあげ、何を伝えるべきか、どうすれば魅力が伝わるか気づいてもらう手伝いをしたいんです」。