「これからの企業と生活者のコミュニケーションを変えるのは誰だ?」――宣伝会議 創業60周年の節目の号である本号では、メディア、テクノロジー、地域など、さまざまな切り口で、コミュニケーションの新しい可能性を拓いている40名あまりのクリエイターの活動を紹介します。なぜ、あなたはその活動に取り組むのですか? 自身の活動を通じて実現しようとしていることは何ですか? それによって企業のコミュニケーションはどう変わり、あるいは私たちの未来がどうワクワクするものに変わっていくのでしょうか?―― これからのコミュニケーションを考えることは、これからの広告の形を考えることにほかなりません。彼らが語る言葉の中に、次なる広告の発想の刺激やさまざまなヒントが見つかるのではないでしょうか。あるいは、新しいコミュニケーションにチャレンジしたいときのパートナーとして、力強い味方になってくれるかもしれません。
いまむら・なおき
東北芸術工科大学映像学科教授。サン・アドなどの広告制作会社を経て、87年独立。最近の代表作に、第一生命、ダイワハウス、マスターカード、pricelessシリーズ、シャープ アクオス、ソニー 4Kグラビアなど。著書に『幸福な広告̶CMディレクターから見た広告の未来』(羽鳥書店)。
従来とは真逆の制作プロセス
今村さんが2007年から継続して取り組んでいる「オフコマーシャル」は、クリエイターからクライアントに提案して作る、つまり、従来の広告制作とは真逆のプロセスのCMだ。今村さんがオフコマーシャルに取り組み始めたのは、従来型の広告ビジネスの枠組みから“はみだす”必要性を感じたため。「そもそも広告は、社会を良くしたり、人々を幸せにするためのものだったはず。しかし、従来の“受注産業”としての広告制作フローの中ではその本来の目的が見えづらく、制作現場は疲弊し続けています。仕事をただ待つのではなく、クリエイター自ら仕事をつくりだす。そうしなければ、広告の明日はないと思ったのです」。