生活者の価値観が多様化し、デモグラフィックな属性でターゲティングする、従来の発想はますます通用しづらくなっている。そうしたなか、国内最大級の女性向けライフスタイルアプリメディア「LOCARI(ロカリ)」は、現代の大人女性の実態を明らかにするべく、博報堂の働く女性研究プロジェクト「博報堂キャリジョ研」と、性格診断で注目を集めるディグラム・ラボと共同で、「今、重要視する価値観」をベースに女性を分析・分類した『新オトナ女子図鑑 完全版』を完成させた。図鑑を通じて見えてきた、現代“オトナ女子”の実態とインサイト、さらに消費特徴は?
“オトナ女子”を価値観で分類一般女性の姿を明らかに
木村:現代の“オトナ女子”は、たくさんの顔を持っています。働いていたり、母であったり、妻であったり、趣味を大切にしていたり、いつまでも可愛くいたかったり。このような、いろいろな価値観を持つ女性を「F1層(20歳~34歳・女性)」など、年齢や属性で一括りに捉えることはできない、と考えていました。
さらに、企業のマーケティング活動においても、そのような表層的なターゲット分類では、本質的なターゲティングは難しく、多額の費用を掛けても望む結果に繋がらないという懸念を持っていました。そこで、より多様化したライフスタイルを持つ現代女性を捉えるために、「今、最も重要視している価値観」をもとに全12パターンに分類した『新オトナ女子図鑑 完全版』を制作しました。
「LOCARI」はアプリ月間130万ユーザー・3億PVを超える、25歳~39歳を中心に支持されているアプリメディアです。“オトナ女子”に向き合ってきたからこそ、女性を取り巻く変化をきちんと捉えることができ、企業に役立つ情報が提供できると考えたのです。
瀧川:私たち「博報堂キャリジョ研」でも、働く女性についてタイプ分析をしたり、トレンドを分析したりしています。今回は、そうした情報や知見を提供させてもらいました。私たちもクライアントのターゲットを分析するなかで、タイプに当てはまらない人が出てきたり、同じ雑誌メディアの読者の中にも違うタイプの人がいたりという、課題を感じていたのです。
木原:僕たちディグラム・ラボは約1400万人の性格診断データ実績があります。その定性・定量データは性格から衣食住まで幅広い。今回は統計的な見地から、「LOCARI」ユーザーと一般女性の比較調査分析し、「このタイプであれば、こういった性格で、このような消費行動をとる傾向が強い」といった情報提供をしました。
木村:「LOCARIユーザーは“現代日本女性”の一般的な人がユーザーである」という仮説を持っていましたが、実際にディグラム・ラボさんの日本人女性の性格を31タイプに分けた全データの分布と、「LOCARI」ユーザーの分布がほぼ重なりました。
木原:そうですね、僕らは企業の既存顧客に対する性格診断を行い、全データと比較した情報を提供しています。例えば、英会話スクールの会員は平均よりも「論理性が高い人」が突出して多いなど、それぞれに傾向が出てくるのです。我々のデータと分布がほとんど重なったという事実は、「LOCARI」のユーザーが日本の一般女性を代表していることを裏付けています。
12タイプごとの性格や消費傾向とは?
木村:今回の分析調査では、25~39歳のオトナ女子を「子あり」「子なし」「有職」「専業主婦」の役割の組み合わせ4パターンと、「個人としての私」「妻としての私」「母としての私」「仕事している私」という今、最も重要視している価値観軸4つを組み合わせて、12タイプに分類しています【図1】。
さらに、有識者や専門家を招いたワークショップを経て、各タイプの行動特性・消費行動を明らかにしていきました。その調査結果はとても興味深いもので、タイプによって「目指している理想像」「悩み」「興味関心」がまったく違うんです。たとえば、「有職・子あり」で「仕事をしている私」を重視している“頼れるアネゴ系キャラ”【図2・(11)】。
出現率は1%で全国に10万人ほど(25歳から40歳女性が1055万人から算出)いると推定されます。彼女たちは、合理主義な性格かつ仕事中心の生活で一見すると男性的で厳しそうに見えるのですが、そのインサイトはすごく女性的なのです。
木原:僕らのディグラム調査では「逆N3型」に近い性格ですね。「YES」「NO」がはっきりしていますが、自分の中で矛盾を抱えていて「甘えたい」という願望も持っています。お酒を飲む率がすごく高くて、外食に行く機会も多い。
木村:悩みも「子どもとコミュニケーションをとる時間がつくれないこと」で、内面にはすごく柔らかい部分を持っています。そこで、たとえばプロモーションの一環で、「子どもとの時間がとれないことを解消するサービスや体験機会」を提供すれば、興味を持ってもらいやすいと思います。
瀧川:働くママの中でも、新しく生まれた人たちですね。現在の出現率は低いですが、今後伸長する可能性が高く、経済力もあることから注目しておくべきタイプです。
木村:私は“Ms.おひかえさま”というタイプも注目しています【図2・(6)】。
「有職・子どもなし」で「妻としての私」を重視しており、出現率が4%です。彼女たちが目指している姿が「異性からも好かれる女性」かつ「同性からも好かれる女性」。つまり、みんなに好かれたいんです。
木原:彼女たちは、嫌われたくないんですよね。僕らは「マリア波形」と呼んでいるのですが、お願いされると本当はやりたくなくても受けてしまう優しい人たち。相手に言いたいことが言えないので、ストレスが溜まりやすい。一方で、同じ性格同士だと、すごく相性がよくて、いい関係を築けます。
木村:性格は「一途」という傾向も出ていて、気に入ったら継続的に同じ商品を使い続ける、企業にとって重要な存在。彼女たちにとって大事なブランドになれば、一生ファンでいてくれます。
瀧川:広告会社にとっても、すごく興味深い内容です。いま「働く女性」を社会でどう支えていくかが議論されています。しかし同じ働く女性と言っても、いろいろなタイプがある。今回の調査で、これまで定義されていなかったことが明確化されたと感じています。
インサイト発見やメッセージ開発に活用
木村:25歳から39歳の女性は、日本の消費活動におけるボリュームゾーンです。『新オトナ女子図鑑 完全版』によって、その姿が多少でも明らかにできたかなと感じています。その情報は、企業のマーケティング活動に役立てられると思っています。
クライアントや広告会社の方とお話していても、これまでは「30代・有職・子ありで、都市部に在住している女性」といったターゲット設定でしたが、さらに踏み込んで「ママの中でも、どういった生活で価値観を持っている人なのか」というレベルで話をすることができ、マーケティングのより深い部分まで掴んだ施策を強く求めていると感じています。
瀧川:これまでのプロモーションは、ターゲットをひとつに定めて、メッセージも絞りこむという方法論でした。しかし、これだけ多様な価値観の人がいるので、同じ商品のプロモーションであっても、タイプごとに機能価値や情緒価値、生活価値などフォーカスするポイントを変えていけるはず。
図鑑を見れば性格や普段、購入している商品など、よりターゲットの特性を微細に描きながら議論することができます。たとえば車の広告で考えると、商品とともにある生活シーンの描き方も「おしゃれなレストランに友人と食事に行くシーン」など、よりリアルなストーリーがつくれるようになると思います。
木原:広告の「メッセージ開発」に役立てられますよね。論理性が高いタイプがターゲットであれば、数字に反応しやすいので「何%引き」「何%の人が感動した」というコピーがいいかもしれない。一方で、感受性が高いタイプには、情緒的な言葉を投げかけた方が反応しやすいはず。クリエイティブのA/Bテストと組み合わせることで、さらに広告効果を高められるでしょう。
木村:これからのマーケティングでは、多様なターゲットごとのインサイトを掴んだ商品開発やプロモーションが求められていくはずです。マス向けの製品やプロモーションはユーザーの心をつかめないかもしれません。デジタルメディアはこれまで、マス広告の戦略策定後に、残った予算でプランニングされるケースが多かった。
しかし今は、デジタルメディアが一番ユーザーに近い存在で、さらに大量の行動データからインサイトを導き出すことができます。クライアントや広告会社の方からも、「もっとデジタルが、プランニングにおける“川上”に行かなければいけない」と言われます。今回の『新オトナ女子図鑑 完全版』が、その一助になれればと思っています。
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