FIVEは、電通「鬼ムービー」チームと共同でミレニアル世代に刺さるクリエーティブ、コミュニケーションの方法論を模索することを目的に、第1回「モバイルビデオ広告コンテスト」を実施。本コンテストの結果からは、ティーン世代に響く、コミュニケーションの方法論が見えてきた。
小宇宙のように点在するコミュニティに寄り添う
動画広告配信プラットフォームを運営するFIVEは電通内でオンライン動画を中心にプランニングから制作・PDCAまで担う「鬼ムービー」チームと共同で第1回「モバイルビデオ広告コンテスト」を実施。2016年7月~10月の期間、ティーン世代から支持を集める動画投稿サイト「MixChannel」上で、完全視聴率を審査基準に行った本コンテストの結果からは、スマホ世代に対するコミュニケーションのヒントが見えてくる。
FIVE 代表取締役CEOの菅野圭介氏、電通 コミュニケーション・プランナーの鹿間天平氏にコンテスト実施の背景、さらにコンテストを通じて得られた知見について話を聞いた(本文中・敬称略)。
─コンテストを企画した背景を教えてください。
菅野:テレビCMを始めとする従来の手法だけではリーチがしづらい、ティーン向けのコミュニケーションに対する課題の声を聞く機会は増えていました。
鹿間:僕たち、「鬼ムービー」チームとしても、ティーン向けのコミュニケーションに関する知見を得たいという考えがありました。スマホを基軸にしたティーン世代向けのコミュニケーションは、単に「若者向け」という言葉では括りきれないほど、独特の世界での文化や作法が存在していて、新たなアプローチが必要だと感じていたからです。
菅野:コンテストの舞台として「MixChannel」を選んだのは、この世代から絶大な支持を得ているから。Facebook、Twitter、YouTubeといったプラットフォームは消費者の日常の中でインフラ的な役割を果たし、コミュニケーション設計に欠かせないものになっています。一方でユーザーの嗜好性は多様化していますので、オンライン上には、そうしたプラットフォームとは別に「MixChannel」のような小さな"宇宙"とも言うべき、コミュニティが複数登場しています。
理想はコミュニティごとに異なる、ユーザーの作法や目線を取り入れて、クリエーティブをつくりわける対応ですが、すべてに対応すれば多大なコストがかかる。判断にはバランス感が必要ですが、デジタルでリーチできるユーザーの母数が増えた今、そうしたアプローチを試してもよい時期に入っているのではないかと考えています。
走りながら企画する制作過程にもイノベーション
─今回はティーン世代を対象にしていますが、根底にあるのはオンライン上に点在する、多様なコミュニティ別にクリエーティブをつくりわけること。その検証をしたかったということですね。
鹿間:企業のオンライン動画活用の変遷を見ても、テレビCMの映像をそのまま流していた時代を経て、Web用に制作する流れが起き、その次のフェーズとして菅野さんが話されている、コミュニティ別のつくりわけに向かっていると思います。
菅野:15秒部門で優秀賞を獲得した、大塚製薬「ポカリスエット」の「ポカリガチダンス選手権」(*電通・眞鍋亮平氏コメント参照)はテレビを使ったマスリーチとコミュニティ別のつくりわけのバランスがとれていて、キャンペーン全体の設計も非常に素晴らしい。また、最初から企画を決め込むのではなくユーザーの反応を見て、走りながら新しい企画を考え、決めていった大塚製薬さんの決断力が結果につながったのだと思います。
テレビCMの世界では、完パケという考えが一般的ですが、企画もクリエーティブも結果を見ながらチューニングしていく。"制作プロセスのイノベーション"が起きているのではないでしょうか。
鹿間:大塚製薬さんはキャンペーン全体が革新的ですよね。「自分は、きっと想像以上だ。」のキャッチフレーズで展開する、テレビCMで培ったクリエーティブ資産を生かし、「MixChannel」ではユーザーから「ガチダンス」動画を募集。さらに、その投稿動画を活用した1分間の特別CMをテレビでオンエアするという一連の流れで、リーチとエンゲージメントの両方を実現することに成功していると思います。
菅野:「広告は嫌われている」という言説がありますが、僕は逆にモバイルビデオ広告コンテストを通じて広告の力を感じています。15秒素材の視聴完了率では平均値を2倍以上、上回る史上最高の結果となりました。コミュニティ別に異なる、ユーザーの作法や目線に合わせてつくられた広告は、きちんと届いて見られるのだと実感しました。
鹿間:おそらく、日本にテレビが浸透し始めた頃、先人たちはこの新しい未知の場に合ったコミュニケーションのあり方を必死に模索したのではないでしょうか。今は、新しいメディアが登場するスピードが格段に速まったので対応が難しくなっていますが、いつの時代も、そのメディアの先にいるユーザーの作法に合わせたクリエーティブを考えるのが、僕たちの仕事だと思います。
菅野:そうですね。コミュニケーションの場となるメディアが変わっただけだと言えそうです。ただメディアの変遷があまりに激しいので、僕たちのようなテクノロジー企業がユーザーの反応をデータとして、収集・分析して、インサイトを補強していただく有効なインプットができればと考えています。
今後はティーン世代に留まらず、小宇宙のように点在するコミュニティ別のユーザーの価値に寄り添うコミュニケーション戦略のあり方を発信する取り組みをしていきたいと思っています。興味のある方がいらしたら、一緒にいろんな実証実験に取り組んでいきたいですね。
モバイルビデオ広告コンテスト15秒部門で優秀賞獲得
「ポカリスエット」のクリエーターに聞く勝因とは?
電通 眞鍋 亮平氏
大塚製薬さんからは、打ち上げ花火的なマスキャンペーンだけでなく、ターゲットであるティーン世代とオールウェイズオンでコミュニケーションしたいという課題を聞いていました。そこで「自分は、きっと想像以上だ。」のキャッチフレーズで展開するマス広告の世界観を生かした、「MixChannel」上での「ガチダンス」動画コンテストを企画。動画の企画に際しては、「MixChannel」のユーザーの話法を研究し、その世界に"まみれる"ことを意識。マス広告の話法をそのままオンラインに移植したわけではないクリエーティブが、ユーザーからの支持につながったという実感があります。
「ポカリスエット」は、2016年の春にすでにユーザーからの写真投稿企画「#ポカ写」キャンペーンが成功しており、そこでデジタルを基点にしたキャンペーンは最初からつくりこまず、ユーザーの反応を見ながら次の施策を決めていく柔軟な対応が効果的であることをクライアントさんと共有することができています。「ガチダンス選手権」でも「MixChannel」での盛り上がりを受けて、1分間のテレビCMを新たに企画・放映したのですが、それが大きな反響につながりました。走りながら企画する体制は、クライアントさんの決断があって、実現したことだと思います。
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