今号では、36人のコピーライター、プランナーの皆さんに自身の「コピーの作法」をご執筆いただきました。36人のコピーライター、プランナーの頭の中にある「コピーの作法」をどうぞ覗いてみてください。
言葉は、人間の記憶の集合体。
玉山貴康
たとえば、「海」という字。
この言葉を見て、何を思い出しますか?…「どこまでも続く水平線」だったり、
「打ち寄せる波の音」だったり、「青さ」だったり、
「海水のしょっぱさ」だったり、
「水着」や「素足で歩いた砂浜の感触」だったり、いろいろあると思います。
ではもうひとつ、「家」という字はどうでしょう?…「家族」だったり、
「故郷」だったり、「暖かい」だったり、
「飼っているペット」や「おふくろの味」だったりするかもしれませんね。
その言葉を見て、人それぞれに何か思い出すものがある。
つまり、言葉というものは、「人間の記憶の集合体」なのかもしれないと思うのです。
言葉の奥(もしくは先)には、風景や色や音や声や匂いや温度や感触や味覚や
さまざまなものが存在している。
言葉の正体は、じつは「それら情報」なのではないか。
実際に目で見えている言葉自体は、それら情報を中に含む「記号」なのかもしれない。
そんなふうに考え直してみると、
これまでいかに言葉を表面的にしかとらえてなかったか。
モノゴトの本質を見抜くヒントが隠されている気がしたのです。
たった一言でもそこには膨大な情報が在るんだと気づいたとき、
目に見えないものこそ大事にしようとする気持ちが生まれました。
とてもありふれたなんでもない言葉を前よりずっと大切に扱うようになりました。
コピーライターとは、そんな言葉が内在している情報性を駆使して、
商品や企業や社会のために役立たせる職業なのかもしれません。
コピーに対してもこう考えるようになりました。
広告の中に置かれている文字がコピーではなくて、
その文字に触れた受け手が心の中にどういう読後感を抱くか、
それそのものがコピーなのではないかと。
文字がコピーじゃない。受け手が感じ、心に残ったものがコピーなんだと。
さて、もうあと数十字で終わります。
僕のパートで、あなたの心の中に何か残っていたらうれしいな。
…それが、僕のコピーです。
コピーライター/クリエーティブディレクター。電通第5CRP局勤務。主な仕事に、楽天トラベル突き出しシリーズ、男女平等参画推進「DV 根絶パネル」、キヤノンEOS60D「趣味なら、本気で」、ACジャパン「こだまでしょうか」、島根県自虐カレンダーなど。05年TCC新人賞、07・10年TCC賞など受賞。
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