今号では、36人のコピーライター、プランナーの皆さんに自身の「コピーの作法」をご執筆いただきました。36人のコピーライター、プランナーの頭の中にある「コピーの作法」をどうぞ覗いてみてください。
コピーにおけるおもてなしについて
小野田隆雄
選挙の立候補者についてよく言われる言葉で
「出たい人より出したい人を」というフレーズがあります。
広告というものは、売りたい商品を売るために出されるものです。
したがって、売り手が言いたいことを言おうとするのは正しい行為です。
しかし正当ではあっても、効果的であるか否かは、
そこになんらかの知恵や工夫があるか否かに、かかっていると思います。
言いたいことだけ正面に並びたててみても、下手な口説き文句と同様に、
ほとんど相手を引き留めることはできません。
自分がいかに仕事ができるか、いかに将来を期待されているか、
いかに職場で人気があるか、大学の成績はオールAでテニスの選手であったとか、
家は高輪にあるとか、こういう条件の羅列というものは、
高性能を並べ立てた広告と同様です。
誰も魅せられません。逆にお客様に気に入ってもらおうと、
お客様の歓びそうなことばかり並べてみても、
そういうおもねりは、ほとんどの場合に見抜かれてしまいます。
好いことづくめとか、イイトコ取りというロジックは、
現実の世の中ではあり得ない。
すべてに光と影がある。
長所と短所は隣り合せなのです。
最高の高速性能と最高の安全性というレトリックが併記された
自動車のチラシを見たら、あなたはどんな自動車をイメージしますか?
スポーツカーですか?高級乗用車ですか?
おもてなし、ということの本当の意味は…