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超新訳コピーバイブル

山本高史、箭内道彦のコピーの作法

山本高史、箭内道彦

今号では、36人のコピーライター、プランナーの皆さんに自身の「コピーの作法」をご執筆いただきました。36人のコピーライター、プランナーの頭の中にある「コピーの作法」をどうぞ覗いてみてください。

    先輩は知っている。

    山本高史

    この原稿は「コピーライターの後輩に向けたもの」と聞いている。
    そのつもりで書く。今から確か17、8年前か、青山通りに面したサ店の2階。
    そこでチャをシバく、ある敬愛する先輩とオレ。
    その頃ちょっと仕事ができるふうになった小天狗(オレ)の鼻を
    ぐりんぐりんするように、「オマエにはまだフォームができてへん」とそのヒト。
    「ははあ仰せの通りで」とひれ伏しながら、内心なんのことやらわからない。
    「つまりこういうことや」とそのヒトは話してくれたと思うが、
    「ふむふむ」とうなずきながらもその場で一気に腑に落ちないのがこの類いの会話である。
    「フォーム」とやらを(オレなりに)理解するまでには、そこから数年。
    つまりこういうことや。
    広告を巡る状況はどれひとつ同じではない。
    ピッチャーのタマに似ている(昭和の男の例え話は野球だ)。
    どれひとつ同じタマはない。例外だらけだ。
    コピーライターはそれに最適に対応しなければならない。
    しかし例外を1から100まで覚えたところであと1億は残る。
    だから「まず素振りをしろ」、「書く足腰を鍛えろ」、
    そして「自分にフィットしたフォームを見つけろ」。
    そんな「フォーム」を身につけたならば、速球も変化球も少しの変更に過ぎない。
    ならば平気で対応できる。
    打席にしっかり立て。タマをよく見ろ。そして力一杯振り抜け。
    あの日の記憶のメモをちらちら見ながら、
    オレは意識の上下で「フォーム」を考え続けていたんだと思う。
    そういういきさつなのでいちいち告白するのもなんだが、
    「受け手がすべてを決める」という「フォーム」に行きついた。
    あのね、「フォーム」あるとスゴいラク。ブレないし、関係者に説明しやすいし。
    文字数もないのでここで自分の話は書かないけど(なんやねん)。
    ただそのフォーム、そろそろ更新しようかと。
    ブレないってことは、硬直しているということかも知れないし。
    このあいだ占いのオネーサンに「停滞してますよ」って言われたし。
    いつまでたってもラクにならんねー、この稼業。

    クリエーティブディレクター、コピーライター、関西大学社会学部教授。1961年京都府生まれ。TCC最高賞、TCC賞、クリエイター・オブ・ザ・イヤー特別賞、ADC賞など受賞多数。『案本』、『伝える本。』、小説『リトル』、共著に『ここから。』などの著書がある。

    箭内道彦

    その人が、今まで誰にも言われたことのなかった言葉で、
    でもみんなが、うんうん、そうだよね!って思える言葉で ...

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