映像がないラジオCMは聞いたその瞬間に、シチュエーションを理解してもらうことが大事。そこで大きな役割を果たすのが音響効果だ。
効果や 石川秀行(いしかわ・ひでゆき)
数多のラジオCMで音響効果を務めた、この道では大ベテランの中山惠文さんの「効果や」に入社。以来、20年以上にわたり、ラジオCMを中心にSE(効果音)の制作に携わっている。
求められる音は現場で録音
ラジオCMの冒頭に入る街中の雑踏やオフィスでの人の会話などの“ガヤ”、車が走り去る音、さらには雨や風の自然音まで、そのストーリーに必要な音をつくって表現し、場面を盛り上げたり、雰囲気をつくり出すのが音響効果の仕事。「撮影音声を同録したり、簡単な音楽をつくることもありますよ」と話すのは、その名も「効果や」で仕事をする石川秀行さんだ。「効果や」はこの業界では大ベテランの中山惠文さんが立ち上げた会社で、石川さんも20年以上この仕事を続けている。
近年、機材のデジタル化が進むにつれ、音のつくり方も変わってきている。かつては録音した音源をオープンリールで再生し、必要なところをテープでつないだが、いまはPC上で完成してしまう。大きなざるの上にあずきを転がして波の音をつくるようなことはほとんどない。「それでもまだうちはアナログなつくり方をしているほうだと思います」。というのも、中山さんの音づくりに関するこだわりがあるからだ。「中山が徹底しているのはリアリティ。必要な音を、その現場に行って録音します」。音響効果の依頼は、すべての企画が完成し、最後の最後に来ることが多く、納品までの時間がないことも少なくない。それでも、できる限り求められている音を録りにいく。「たとえPC上でつくるにしても、やはりリアルな音は確認しておきたい。そういう自分自身の興味もあって、いまでも音の現場に足を運ぶことが多いですね」。