「かみの工作所」は、紙の加工・印刷による可能性を追求するプロジェクト。独自の商品開発により生まれたプロダクトは、国内外で人気を集めている。
手にしたときの驚きや喜びを追求
「かみの工作所」を運営する福永紙工は、創業51年になる紙製品の印刷と加工を得意とする工場。主に厚紙のパッケージ印刷、加工を手がけており、“デザイン”とは縁がない会社だった。「業界が厳しくなるなか、下請け的な仕事から脱却したい。自社が提供できる技術、福永紙工をもっとデザイナーに知ってもらいたい」という思いを抱いていた現・代表取締役 山田明良さんが、2005年にデザインディレクター萩原修さんと出会い、翌年プロジェクトとしてスタート。自主的な展覧会や見本市を経て、09年から本格的にプロダクトの生産と流通を始めた。これまでにグラフィックデザイナーのみならず、建築家やアーティストが参加している。
「特殊印刷や抜き加工という得意分野がある会社ですが、ほかの会社と比べて、その技術や設備が突出しているわけではありません」。では、なぜこれまでにない、新しいプロダクトが次々と生まれるのかといえば、「現場の職人とデザイナーが一緒になって考えたことが大きい」という。「制作に参加するデザイナーには必ず現場に足を運んでもらい、ここでまず何ができるのかを見てもらいます。職人もデザイナーも共に“そんなことはできない”と考えるのではなく、“もしかするとできるんじゃない?”という可能性をひたすら探る。これまでに生まれたプロダクトの多くは、まさに印刷現場で発想したものです」。