2016年にスタートし、今回で6回目の開催を迎えた「デジタル時代のブランドコミュニケーション戦略を考える研究会」(オプト、宣伝会議 マーケティング研究室の共催)。デジタル施策を通じて、いかに消費者とブランドのエンゲージメントを構築・強化するか。多くのブランドマーケターが関心を寄せるテーマの下、広告主企業3社がディスカッションを行った。
ブランド成長のカギ「経験価値」をどう生み出すか
研究会に参加したのは、スカパーJSAT、積水ハウス、東芝ライフスタイルの3社。事業領域も商材も異なる各社だが、コミュニケーションやビジネスのデジタルシフトを進める中で、同じ課題感を持っていることが伺えた。
ディスカッションに先立ち、名古屋商科大学の山岡隆志教授が登壇。デジタルマーケティングの基本的な考え方について講演を行った。山岡教授は「ブランドの出発点は、他との差異をつくり出すこと」であると改めて強調。「まず『自分は何者か』を発信すること。ブランドアイデンティティの確立は、基本的なことのようで、多くの日本企業が忘れがちなことでもあります。特にオンラインビジネスは"指名買い"が基本。消費者から認知されるための差異づくりが重要です」。
また、ブランドが提供すべき価値が「経験価値」へシフトしていると指摘した。「商品を購入したらそれで終わりではない。そこから顧客とブランドとの絆を深め、ロイヤルカスタマーへと育てていくことが大切です」。
ディスカッションで各社が口を揃えたのは、生活環境のデジタル化に伴い、お客さまの行動が大きく変化しているということ。
「戸建住宅の場合、お客さまはインターネットで徹底的に情報収集した上で住宅展示場を訪れ、実際に見学するハウスメーカーは絞られている。展示場を訪れる前の段階で、どんな情報を届けられるかが重要です」(積水ハウス 朝田修平氏)、「家電業界では、ECで商品を購入するお客さまの割合が高まり、消費者間の口コミが購買に与える影響が大きくなってきています」(東芝ライフスタイル 堀内秀記氏)といった声が聞かれた。
また、「自社のコアコンピタンスを見つめ直す必要性を感じている。当社は、コンテンツ頼りのプロモーションから脱却しなくてはなりません」(スカパーJSAT 三上武典氏)との意見も出た。
こうした課題を受け、オプトの松本康成氏は、消費者の共感と口コミを喚起するエンゲージメント型のデジタルマーケティングが重要だと指摘した。「ポイントは、ユーザーのインサイトに寄り添い、ブランドを自分ごと化してもらうこと。『ユーザー自身がどう思うか』だけではなく、『口コミとして、友人や知人にどのように伝えるのか』というところまでイメージした上で、施策を考える必要があります」。
実例として紹介されたのが、積水ハウスの取り組みだ。「創業50周年を迎え、リブランディングをするにあたり、『家に帰れば、積水ハウス。』というコピーでテレビCMのトーン&マナーを統一。1970年につくられたCMソングを復活させたことで、一般ユーザーが"歌ってみた"動画をYouTubeに多数投稿するという予想外の反響もありました」(朝田氏)。
住宅オーナーとは、オフラインでは年2回の情報誌などでコミュニケーションを図り、オンラインでは会員制サイトで住まいのメンテナンスに関する情報などを発信。マス/デジタル/リアルを一体化させた施策でロイヤルカスタマー化に取り組んでいる。
デジタルシフトを進めていく上で、旧態依然とした企業風土がネックになっているという指摘も。「市場環境やお客さまが大きく変化している一方で、企業内では自分たちのやり方・考え方を変えられず、ギャップが生まれている」(堀内氏)など、経営層を含む社員の意識が急激なデジタル化に追いつけていない状況が見受けられた。
まずは社内で問題意識を共有しコンセンサスを得ることが、デジタル時代において効果的な施策を考え、実行する上での鍵となりそうだ。
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