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ビッグデータ時代のDMは、お客さまの「コンシェルジュ」の役割を果たせる

レスポンス・プランニング・クリエイティブなどにおいて優れたDMを表彰する「全日本DM大賞」。今年初めて、その審査員を務めるクリエイティブディレクターの佐藤夏生氏と、DMの進化を見つめ続けてきた日本ダイレクトメール協会の椎名昌彦氏が、デジタル時代のコミュニケーションに必要なことや、そこでDMが果たすべき役割について意見を交わした。

───佐藤さんの普段のお仕事と「ダイレクトメール(DM)」とは少し距離があるように感じられますが、「全日本DM大賞」の審査員の打診を受けてどう思われましたか。

佐藤:企業と顧客、ブランドとファンをつなぐタッチポイントで、どんなエクスペリエンスを生み出すか。この観点に立てば、プロダクトも、テレビCMも、店舗UXも、DMも、アウトプットの形が違うだけで役割は同じですから、特に違和感はありませんでした。DMは「多くの人に一斉送付して、購買意思決定に向けた最初の取っかかりをつくるもの」というイメージを持たれ、「どれだけ費用対効果を高められるか」に議論が終始しがちであるというのが、これまでの一般的なあり方だったと思います。

しかし、僕が長年担当してきたクライアントは、DMをロイヤル顧客へのアプローチ手法のひとつとして活用しています。ブランドから顧客に対する“おもてなし”そのもので、いわゆる“刈り取り型”のDMとは一線を画します。この原体験があって、僕はDMを「ダイレクトメール」ではなく「ダイレクトメッセージ」と捉える必要があると考えています。

「メール」という形状ではなく、「メッセージをダイレクトに伝える」という目的にフォーカスすれば、DMに対する捉え方・考え方は大きく変わっていくのではないでしょうか。

HAKUHODO THE DAY 佐藤夏生氏
DMは、ブランドの多様な価値と顧客をつなぐ、解像度の高いコミュニケーションを実現できる。

椎名:佐藤さんは、DMというメディアととても良い出会い方をされたのですね。日本におけるDMは、まだ“刈り取り”のイメージが根強い。もちろん、購買促進という目的においても有効な手段ではありますが、ややそこに偏っていることに課題を感じています。

佐藤さんの言葉を借りると、海外では多くの企業が、「ダイレクトメッセージ」を届けるメディアとしてDMを上手く活用しています。購買促進だけでなく、ブランディングを目的とした活用も活発です。“刈り取り”施策ばかりを続けていては、ターゲットが枯渇し、次第に獲得効率も低下していきます。潜在顧客の育成が不可欠であることに気づき、大手通販事業者をはじめ多くの企業がブランディングを重視するようになってきました。

ターゲットのインサイトを理解した上で、おもてなしを重ねながら、ブランドとターゲットとの関係を深めていく──今後は日本でも、そうした活用が広がっていけばと考えています。

佐藤:既存顧客に対してダイレクトにアプローチすることは、マーケティングの正しい方法論のひとつで、高い費用対効果が望めます。しかし一方で“無駄なリーチ”が必要なケースもあることを、ここ数年で学びました。既存顧客の少し外側、僕は「ブランドの際(きわ)」と呼んでいるのですが、そこにブランドの成長の可能性が眠っていると思うんです。

ブランドから直接おもてなしを受けることはもちろん、そのブランドが周囲からも評価されているのだと認識することでも、ロイヤリティは高まっていきます。ブランドの価値を高めていく上では、ダイレクトメッセージとマスメッセージの両方をバランスよく発信することが重要なのではないでしょうか。

Many to Manyをつなぐコミュニケーション設計が必要

佐藤:デジタル時代の今、自社ブランド・商品に関する情報流通量を増やすことはもちろん重要です。しかし、量を増やそうとするがゆえ、質が落ちるのは避けるべき。あらゆるタッチポイントにおけるエクスペリエンスの質の積み重ねが、ブランドをつくり上げていくからです。例えば、商品の新しい使い方や役割、社会との関係など、これまでは知られていなかった価値に気づかせるような情報を届けることは、良質なコミュニケーションと言えると思います。

椎名:ブランドとは、そうした多様な価値の集合体であると言えますね。

日本ダイレクトメール協会 椎名昌彦氏
“刈り取り”だけでなく、ブランディングを目的としたDM活用を広げていきたい。

佐藤:はい。15秒・30秒のテレビCMでは伝えきれない価値がたくさんあります。ブランドや商品が持つ価値は本来多面的なもの。ひとつの商品でも、接する人によって感じる価値はさまざまに異なりますし、価値を伝えるべき相手もターゲットだけではないはずです。

つまり、伝える価値と伝える相手の組み合わせ方は無限にある。その“Many to Many”をつなぐ、丁寧な設計が必要だと思います。企業・ブランド・商品と、顧客・暮らし・人生の間に良い接点をつくり出すことがマーケティング・コミュニケーションの本質。DMは、多面的な価値を持つブランドと多面的な存在であるお客さまをつなぐコミュニケーションを、解像度高く実現できるメディアと言えますね。

椎名:デジタルマーケティングでは、相手に合わせて最適化したコミュニケーションを行うことがもはや基本ですが、紙メディアで同じことをしようとすると非常に手間がかかり、これまではなかなか取り組みが進みませんでした。しかしバリアブル印刷をはじめとする技術の進化により、その課題も解決されつつある。データを基に相手に合わせた多面的なコミュニケーションを行うことが可能になっています。

───お二人の、DM活用アイデアを聞かせてください。

佐藤:相手のラーニングにつながるようなものがいいですね。届けば届くほど、受け取った人にとって役に立つ、学びが蓄積されていくようなDMは、まだ存在しないように思います。

椎名:顧客データを活用する環境の整備が進んだことで、属性データはもちろん、購買履歴やWeb行動履歴を組み合わせれば顧客の興味・関心までわかるようになりました。「アナログメディア」と捉えられていたDMも、顧客データを活用することで、デジタル広告並みの精度でターゲットに届けることができるようになっています。

その環境下、今後求められるのは、一人ひとりにぴったりの商品を提案してくれるDMではないでしょうか。情報の取捨選択や判断に負荷がかかる複雑な商品・サービスが増えている中、データを基に「あなたにはこの商品が最適です」と提案してくれるDMは、重宝されるのではないかと思います。

ビッグデータ時代の広告・コミュニケーションは、お客さまの“コンシェルジュ”のような役割を果たす必要がありますし、またそれが十分可能となっています。DMを、そんなコミュニケーション手段の代表として、進化させていきたいですね。

佐藤:ポストを開けるのが楽しみになる、そんな気運を盛り上げる気概を持って、僕らクリエイティブに携わる者は一つひとつ良いDMをつくらなければならないと思います。

心のこもったもの・丁寧につくられたものは、受け取ればわかります。読むに値するものか、受け手はすぐに判断できるのです。そう考えると、内容はもちろんのこと、紙質も含めた“しつらえ”も、重要な要素です。量的(費用対効果)だけでなく、質的にDMを評価する流れが強まれば、DMの活用可能性はさらに広がっていくのではないでしょうか。

HAKUHODO THE DAY
エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター
佐藤夏生氏

日本ダイレクトメール協会
専務理事
椎名昌彦氏

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