市場での競争を優位に進めるためには差別化要素が不可欠だが、見出せずにいる企業は多い。そうした状況の中で、企業活動の歴史に刻まれた「物語」の重要性が高まっている。本セミナーでは企業に根づく物語を、市場競争における強み、そして社員への求心力として活用する「物語戦略」を事例や実践方法とともに紹介した。
象徴的な物語は、見つけだせる、つくりだせる
3部制で行われた本セミナー。第1部の講演に登壇したのは、「物語戦略」筆者で大広の岩井琢磨氏。「社員と顧客にわかりやすく自社の特徴を伝えることができるツールが、企業の歴史の中にある物語」として、企業の強みを象徴し他社との差別化要素となる「シンボリック・ストーリー」を、(1)どう見つけ、(2)どう使い、(3)どうマネジメントするか、といった実際の企業活動の中で効果を発揮するための方法を説いた。
「シンボリック・ストーリーは顧客価値や競争優位性、儲けの仕組みといった戦略要素の根源となるもの。そのため、これら3つの戦略要素と整合性のとれた物語でなくてはならない」と岩井氏。シンボリック・ストーリーの特徴として、人的資源タイプ(創業者・顧客)、物的資源タイプ(商品・サービス)、組織資源タイプ(技術革新)を挙げ、「自社だけに存在し、誰かに話したくなる『尖った』ストーリーが、物語戦略の軸としてふさわしい」と話す。
岩井氏はこうした人々の胸に刺さる物語は、過去の逸話にもとづくものから『見つける』だけでなく、現在の企業活動の中で『つくる』ことができると説明。(1)ルール化する、(2)ロールモデルをつくる、(3)現場に裁量権を与える、といった偶然に頼らないシンボリック・ストーリーづくりの仕組みを、海外企業の実例を交えて紹介。実際に紹介された海外企業は、いずれも人々の記憶に刻まれる印象的な物語とともに第一線で活躍する企業として発展し続けている。
企業を象徴する物語を企業理念として引き継いでいく
第2部に登壇したオムロンの井垣勉氏は、シンボリック・ストーリーを社内で共有し、企業理念の実践に活用している実例を中心に講演を展開した。オムロンではさまざまな情報み、社会が求めるニーズを満たす価値に変換する「Sensing&Control」のコア技術を活用し、社会発展に貢献してきた。この価値創造の精神を社員一人ひとりに実践してもらうことを目的に、2012年度より企業理念に基づいた実践内容を社員全員で褒め称える表彰制度「TOGA(The Omron Global Award)」を実施。その結果、110を超える国や地域で事業を展開するグローバル企業でありながら、創造力を源泉に社会貢献する企業精神が社内に定着している。
第3部では、岩井氏と井垣氏によるパネルディスカッションが行われた。「物語は理論ではなく実践から生まれる。今回紹介した手法をフレームとして活用しながら、時代に応じた企業活動を展開してほしい」と岩井氏。市場競争を勝ち抜くための打開策を模索する参加者にとって、本セミナーは自社だけの強みを見つけだすきっかけとなった。
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