東急エージェンシーは昨年5月にビジネス創造センターを立ち上げた。日本にとって大きな節目となる2020年、さらにその先を見据えたチャレンジをスタートさせる目的だ。マーケティングコミュニケーション支援において培ってきた従来の強みに加え、デジタルシフトに対応したアクティベーションプラットフォームを有する、次世代のコミュニケーション会社を目指す。
消費者のデジタルシフトは不可逆なトレンド
デジタル化の流れ、それに伴う消費者の変化は確実に今後も進展していく、不可逆なトレンドと言える。その影響を受け、従来のマス広告に重きを置いたマーケティング活動も変化を余儀なくされ、広告業界にも次世代型への進化が求められている。
クライアントから寄せられる要望も、より本質に向かい、マーケティング活動がどう成果につながっているのか、さらには、いかにしてビジネスでの成果につながるか。そのプロセスの可視化を求める声が高まっている。変化のスピードが激しい時代において「今、何が起こっているのか」を把握したいという「リアルタイム性」が重視されている表れと言える。
東急エージェンシーでは、こうした環境認識に基づき、昨年5月に約130名で構成される、ビジネス創造センターを立ち上げた。この組織には、同社が2020年へ向けて掲げたビジョン「実験、実践、実現。For Amazing Experiences」を体現するための推進エンジンとなることが期待されている。具体的な取り組みとしては、同社でアクセス可能なデータリソースを最大限に生かし、単にクライアントのコミュニケーション上の要望に応えるサービスの提供だけではなく、ビジネスレベルで活用でき、アクティベーションにつながる新たなソリューションの開発を進めている。
同センター戦略推進局局長兼オープンイノベーションラボ部長の神通靖彦氏は、アクティベーションのゴールである購買へ至るプロセスをリアルタイムで可視化することができる「アクティベーションプラットフォーム」が必要と提案する。アクティベーションプラットフォームとは、生活者が購買行動へ進んでいくシナリオをリアルタイムに計画・実行・検証・最適化するための仕組み、仕掛けを指す。神通氏は、「アクティベーションプラットフォーム実現の鍵となるのはリアルタイム性とオープンイノベーションだ」と話す。
企業保有のデータを活用できる顧客理解の新プラットフォーム
生活者を行動に駆り立てるものは何か、それを見つけ出すためには、コミュニケーションからビジネスまでのあらゆる接点を、データを用いてリアルタイムに把握する必要がある。また、取得した膨大なデータを効果的に活用するための解析も重要となる。同社はシングルソースのパネルデータQPR™のデータ分析で培ったインサイト発見に関する経験と実績を持っており、この経験を生かしたツールとして開発されたのが2015年7月に正式リリースした「Target Finder®」だ。
このソリューションは、産業技術総合研究所がPLSA(Probabilistic Latent Semantic Analysis)という分析手法をサービス工学分野での応用として実用化した技術を東急エージェンシーが監修、独占販売権を持ち、ソフトウェア開発会社ロジックデザインがマーケティングコミュニケーション向けに開発したものだ。
各企業が持つID‐POSデータやウェブサイトへのアクセスログといったIDつきのシングルソースデータを用いて分析。顧客をソフトクラスタリングによりセグメント化し、そこから興味・関心の強いカテゴリーや購入可能性の高い商品カテゴリーなどを見つけ出し、購買に至る行動の特徴や、最適なカスタマージャーニー設計のキーインシデントとアプローチすべき顧客リストまでを導きだすことができる。
同センタービジネスソリューション局局長、玉田英志氏によると、導入した企業では、過去1年間自社ブランドカード会員で特定商品カテゴリーでの決済履歴がない人へ向けた利用促進のDMに対する来店率が0.3パーセント程度から、Target Finder®による分析を経た結果、反応率が13倍の3.9%になり、店頭決済にまでつながった例もあるという。
シングルソースデータを用いることにより、データ統合の手間や煩雑さを解消し、導入の簡便性を確保、解析にかかる時間も短縮できリアルタイム性も担保している。一方で、POSやアクセスログを個別に分析し、結果をデータ統合することで複数データを利用した検証も可能だ。導入についてもクライアント企業の自社サービス向けだけでなく、ビジネス利用も可能。導入に関するサポートも対応する。
さらに同局では商業施設やチェーンストア、大型複合施設などの情報システム「TACSIS®」もローンチ。「TACSIS®」は情報を軸としてアクティベーションプラットフォームを構成するソリューション。複数企業が一同に集まる商業施設を統合された情報システムで管理することで情報共有のスピードアップを実現するほか、館内のデジタルサイネージや来館者の持つスマートフォンやタブレットなどマルチデバイスへの情報発信も可能となる。現在、GPSやビーコンによる情報発信や店内回遊施策のマネジメントが可能となる機能も開発しており、2016年中の完成を目指している。玉田氏は「TACSIS®」と「Target Finder®」を組み合わせればより顧客行動を促すために最適な売り場づくりや、店舗戦略の立案につなげられると考えている。
同社では、オープンイノベーションの一貫として、2016年4月にAntuit(旧オーリック・システムズ)のビッグデータソリューション「AuriQ® essentia」と連携し、より高品質のアクティベーションプラットフォームの組成に向けて、ソリューションの高度化も進めている。「今後、コミュニケーション領域は「共創」がより大事になるフェーズに入る」と神通氏は話し、オープンイノベーションラボとしても外部の企業や組織との連携を深めていく方針だ。
お問い合わせ先
株式会社東急エージェンシー
ビジネス創造センター ビジネスソリューション局 プラットフォーム開発部 飯塚・蓮川
TEL:03-3475-9485