社会が変われば、プロモーション施策も変わる。そして、その施策をつくるプロモーション担当者も変化しなければならない。しかし、昨今の生活者を取り巻く状況は、10年前と比べても大きく変化した。環境保全や多様性への配慮など、広く社会を捉えて施策を実施する必要がある。新しい知見やスキルを取り入れ、柔軟に対応できる能力が求められている今、これからのプロモーションに求められる資質とは何か。プロモーションの戦略立案から広報・PR戦略まで幅広い業務を担当し、「販促コンペ」の最終審査員も努めるワークマンの林 知幸氏に意見を聞いた。
接点を軸に捉える力 分析を追求できる担当者に
──過去と比較して、プロモーション担当者に求められるスキルや資質はどう変化しているでしょうか。
まず、企業のプロモーション担当者に求められるスキルと資質は大きく変化していると思います。10年前、広告の主要な目標は「認知度」でした。テレビ広告や新聞広告を通じてブランド名や製品を広く知らせ、顧客に認知させることが成功の指標となっていたためです。
しかし、今日ではSNSやインフルエンサーを通じたコミュニケーションに見られるように、顧客との接点が直接的でない場合も主流になりつつあります。つまり、過去と比べ、顧客接点の多様化が発生しています。
現代のビジネス環境の変化によって、伝統的なマーケティングアプローチだけでは不十分です。そのため、かつてのような企業から消費者への一方通行的な情報発信ではなく、顧客からの共感を築くための「接点」として、プロモーションは進化しています。接点とは、マーケティング4Pの「Place」のこと。私はこのPlaceを軸に、プロモーションを捉えることが重要だと考えています。なぜなら、昨今は4Pの境界も曖昧になり、プロモーションとプレイスが非常に密にあると思っているためです。顧客が“どこ”で企業の情報を得るのか、“どの場所”で商品やサービスを利用するのか。これらを理解し、戦略的にアプローチすることが、これからのプロモーション担当者に求められている資質なのです。
また、デジタル化の進展も見逃せない一方で、顧客とのリアルな接点も依然として必要です。プロモーションを仕事にする担当者にとって最も重要なのは、接点が複雑化した中で、顧客との最適な接点を考えられるかということ。その接点に届ける手法がSNSなのか、アプリケーションなのか、チラシなのか。最適な手法を活用して顧客との接点を深めることが大事になってきます。
共感集める体験価値の発信 ストーリー性が要に
──「共感」という言葉が出てきました。林さんにとって共感とは何でしょうか。
共感とは、製品の魅力を機能的価値や体験価値、情緒的な要素から同調すること。ユーザーが製品を実際に体験し、その感想を共有する過程で生まれ、ブランドと顧客の結びつきを深める役割を担うものです。
ワークマンのブランドでいうと、機能性が高く安価な作業服を体験してもらった後、商品について発信してもらうために、インフルエンサーを…