ディスカウントスーパー「TRIAL」を運営するトライアルホールディングス(福岡市)。その戦略子会社、Retail AIはAI搭載のソリューションを店頭で活用しtoC、toBの両側面でWithコロナ時代を勝ち抜く。
カートにセルフレジ機能を搭載
──トライアルでは新型コロナの感染拡大前からAIを活用した店頭づくりを行ってきましたね。
2018年2月から福岡県内の店舗を中心に「スマートショッピングカート」の導入を始めました。通常のショッピングカートに、スキャナと決済機能、そしてディスプレーを搭載したもので、お客さまが買い物をしながらセルフ決済まで済んでしまうカートです。
このスマートショッピングカートは、福岡県内のスーパーセンター アイランドシティ店に200台、メガセンタートライアル新宮店に200台を導入したのを皮切りに、福岡・佐賀を中心とした約20店舗に数十台~数百台ずつ導入しています。
一方、自社開発のAIカメラ「リテールAIカメラ」は、スマートフォンサイズの筐体に、カメラとIoTセンサーが搭載されたもの。トライアルの店舗全体で約2200台を導入しています。このカメラは来店客の動線や商品棚ごとの通過人数、滞在時間、衝動買いの頻度などをデータ収集し、ディープラーニングを用いて解析しています。
オペレーションファーストで開発
──こうしたAI搭載のソリューションを店頭で具現化しようと考えた経緯は。
当初は米中の小売にならって、店頭のデジタル化、省人化を進めることが目的でした。店舗の省人化を進めるために最も効果的なのは、レジ周りの改革を行うことです。レジのオペレーションを変えることができれば、行列解消やレジ作業の軽減、人手不足や人件費削減にもつながります。
そもそも流通業は変化に対応することが至上命題です。2000年代にはECの流れがきて、2010年代に入ると世界的にIoTやAIを使ったスマートストア化が加速しています。その流れはもはや“inevitable(不可避)”。これから確実に日本にもやってきます。アメリカのAmazon Goや中国の顔認証店舗は遠い世界の話ではありません。一度便利さを体感した消費者はもう以前の生活には戻れない。こうしたソリューションは早晩、日本でも普及すると考えました。
──こうしたAI技術を開発する上で、どのような事例を参考にしましたか。
シリコンバレーに3年ほど滞在した時に、現地で触れたツールやソリューションを参考にしました。
その中で重要だと感じたのがオペレーションファーストであることです。シリコンバレーにいたころ、素晴らしい最新テクノロジーがあっても、操作が難しいなどの理由で一般ユーザーに利用してもらえず、実用化する前にフェードアウトしていく例をたくさん見てきました。
そこで当社の場合は現場のオペレーションやユーザーのデジタル障壁を観察しながら、消費者に使ってもらえるソリューションになるよう、改善を続けています。現場のオペレーションに即してテクノロジーをアレンジし、検証を繰り返すことを大切にしましたね。小売の現場ですが、IT系プロダクトを開発する時に重要なリーン・スタートアップの考え方で開発を行いました。
カート利用者の半数は50代以上
──コロナ禍において、タッチレステクノロジーはどのような効果を発揮しましたか。
スマートショッピングカートは特に本領を発揮しましたね。コロナ禍における小売業のジレンマは、これまで当たり前だった店舗体験が“感染リスクの高い行動”となってしまったことでした。
しかしスマートショッピングカートなら、プリペイド決済を採用しているので入店から退店までスタッフとの接触はほぼゼロ。カゴにエコバッグを装着しておけば袋詰めせずそのまま持ち帰れるので、商品やサッカー台への接触も最小限で済みます。ゴースル-で買い物ができるのです。
おかげでレジの待ち時間解消や、滞在時間の短縮化、来店客の不安感の軽減などに大きく貢献できました。こうした結果を踏まえ、7月には関東の店舗にもスマートショッピングカートなどを導入する予定です。
──来店客からはどのような反応がありましたか。
おかげさまで使いやすいという声がたくさん届いています。コロナ禍で利用者も増えていて、リピート率は90%。一度利用したら、その利便性を実感してもらえるようです。
また、意外なことに...