販売促進の専門メディア

広がるオンライン接客 「非接触」の販売促進手法

新型コロナで拡大する「共感」間違いだらけのYouTube活用の現実

りる(LuaaZ 創業者)

コロナ禍で広がったコミュニケーション手段のひとつに、YouTube動画がある。企業によるYouTubeチャンネルの開設やYouTuberとの連動企画が増えるなか、流通企業やメーカーのYouTube企画などを手がけてきた筆者が解説する。

初めて利用する中高年のユーザーにとって、YouTubeはあまり魅力的に映らないかもしれません。なぜなら、YouTubeを初めて開くと若者が好きそうなコンテンツが多く表示されるため、中高年のユーザーは利用する目的がないと能動的に視聴することはなかったからです。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大とともに自宅で以前よりも長時間過ごすようになったことで、中高年がYouTubeに接する機会と視聴する時間は確実に増えています。それはYouTubeの優秀なAIによるものといえるでしょう。

例えばこの新型コロナウイルスによる自粛期間中に家庭菜園を始めようと思ったある人が、「トマトの育て方」を調べ、動画を見たとします。そうするとその人が次にYouTubeを開いたとき、「いちごの育て方」「正しい肥料の使い方」など「家庭菜園」に関連する動画が表示され、検索をしなくても自分が見たい動画がトップページに表示されるようになります。そのため、中高年のユーザーがYouTubeを視聴する習慣がついてきました。

さらに、視聴行動も新型コロナウイルスをきっかけに「趣味のためのメディア」から、「情報入手目的を含めたメディア」に変容しています。これまで、YouTubeを活用したマーケティングというと、Z世代(1990年代後半から2000年生まれの世代)向けの施策と思われがちでした。しかし、新型コロナウイルス拡大の影響で、消費の中心を担っている中高年のYouTubeユーザーが増えると、それにともないリアルな店舗以外での顧客接点を持つメディアの重要性はさらに高まることになりました。

また、Z世代がこれから結婚を経て家族を持つなどライフスタイルが変化し、消費の中心になっていくことを考えれば、企業にとってはYouTubeをはじめとする動画を活用した販売促進に取り組まざるを得ない状況になっています。

筆者は、YouTubeを中心に企業のブランディングやマーケティングにつながる企業チャンネルの制作・運営から、インフルエンサーを活用したマーケティングまでをサポートする「LuaaZ(ルアーズ)」という会社を運営しています。本記事では、YouTubeを使った販促の現状に触れた後、企業が取り組む際の注意点や具体的なノウハウなどを解説していきます。

若者に届くYouTube販促とは

Z世代は広告を極端に嫌い、YouTubeの広告などを容赦なくスキップします。これまで一般的であった従来型の「差し込み広告」は、商品や企業のブランドの認知度アップには役立つかもしれませんが、商品の購入効果を獲得できる企業は限られており、さらにその傾向は強くなっていきます。

こういったZ世代の傾向を踏まえ、YouTube上で成功した事例を紹介しましょう。「オネガイシマス海賊団!!!」というグループがいます。そのメンバーの1人である「タカシ」という男性は漫画『ONE PIECE(ワンピース)』の大ファンで、ワンピースに関する動画投稿をしていました。その活動に、版元である集英社が目をつけて「新型ファンブックの公認宣伝隊長YouTuber」として任命するという出来事がありました。

集英社がYouTuberを「公認宣伝隊長」に任命
YouTubeで活躍する「オネガイシマス海賊団!!!」のメンバー、タカシさん。漫画『ワンピース』に関連する動画を投稿していたことから、集英社から「新型ファンブックの公認宣伝隊長YouTuber」に任命された。

宣伝隊長に任命されたことを報告する動画は多く視聴され、コメント欄を見ると「タカシさん、本当によかったですね!!! 自分もすごく喜んでいます!!!」「ずっと応援してます!! ファンブックもちろん買います!」と多くの祝福コメントが寄せられました。今後も、ファンはタカシさんの活動を応援するとともに、ワンピース関連グッズを購入することが期待できます。ここには、「タカシさんが好きなワンピースを自分も応援しよう」という自然なストーリーが生まれています。

ここでキーワードになるのは「共感」です。ファンはYouTuberを「友だち」のように感じており、友だちが紹介する商品や作品だから興味を持つという図式が成り立っています。

それでは、このようなZ世代の傾向を踏まえ、企業がYouTubeチャンネルをどのように運営していくべきかを解説します。

1 単なるCM動画の置き場になっていないか

大企業が運営しているYouTubeチャンネルを閲覧してみると、登録者も少なく、単なるCM動画の置き場になってしまっているという“残念”なケースが多くあります。これが販促に役立っているとはとてもいえません。

一方、個人でやっているYouTuberの多くは膨大な数のファンがいます。この差は動画に登場する人物や企画、共感によるものです。ユーザーは人物や企画が面白く、“共感性”の高いコンテンツを好み、視聴するので、そこからチャンネル登録をします。ただ、ここで誤解してほしくないのは、「キャラクターや企画が魅力的」といっても、個性的なキャラクターや、突飛な企画が必ずしも成功するわけではないということです。

これはYouTubeの仕組みと関係があります。

閲覧数が伸びているコンテンツやチャンネルを分析すると、YouTubeのトップ画面に表示される「あなたへのおすすめ」や、再生している動画の隣に表示される「関連動画」から誘導される割合が75%近くを占めています。つまり、閲覧数を伸ばすには、既に膨大に存在しているコンテンツと似ているような内容にするのがカギになります。したがって、「こういったコンテンツを発信しよう」と方向性を決める際には、既に多くの人が作成し、投稿されている動画を参考にし、そこから他のコンテンツとの差別化が必要になってきます。

2 商品やサービスを前面に押し出さない

もうひとつ、企業が失敗しやすい事例があります。それは、自社ブランドや商品をアピールしたいという気持ちが強すぎて、チャンネルのファンが離れていってしまうことです。例えば、ある玩具メーカーの企業チャンネルは開設した当初、有名YouTuberが何度も登場して商品をアピールしたり、必要以上に商品の訴求をするプロモーション動画を立て続けに公開したりしていました。

有名人が出演すると当然閲覧数は伸びますが、有名YouTuberが継続的に仕事を受けることは難しいです。そうすると、知名度が当初よりも高くない人が途中から出演するようになり、有名YouTuber目当てで視聴していたユーザーが離れ、チャンネル登録者や再生回数が減少していくという残念な結果になりました。

こういった事態を防ぐためには、自社の商品を購入してくれるターゲットが純粋に楽しめるようなコンテンツをつくる必要があります。例えば、ミドル世代(35~54歳)をターゲットに腕時計を売りたいのであれば、釣りをメインにしたコンテンツが適切かもしれません。

一見、“腕時計”と“釣り”に相関関係がないように見えますが、購買してほしいターゲットと視聴者属性という点で相関関係が生まれます。そしてYouTubeチャンネルの成長と共に視聴者(ファン)が多く集まり、時計の話題をなるべく自然な形で少しずつ露出させることで、購買につなげることができます。

3 「結果が出るまで時間がかかる」という覚悟

ゼロからYouTubeチャンネルを立ち上げるとすぐに挫折してしまう企業が多く存在します。それはYouTubeのAIに与えられた課題を乗り切ることができなかったためです。

YouTubeは“視聴者”や“広告主”の目線で「視聴者に有益な動画を投稿しているか?」「広告を入れられるチャンネルか?」などを確かめていて、最初の課題としてチャンネル開設から数カ月は基本的に少数のユーザーのみにしか誘導を促してくれないことがほとんどです。

図1のとおり、一般的なYouTubeチャンネルでは開設から数カ月間は低空飛行を続け、半年以上継続したのちにようやく再生回数が増加するようになります。1~2年経ち、ようやく“バズる”といえる現象が起き、その後は時折、減少してしまう時期もありますが成長曲線を描きながら一定数をキープできるようになります。

図1 一般的なYouTubeチャンネルの伸び方
■2018年7月に開設したYouTubeチャンネルの全期間の視聴回数グラフ(2020年6月8日時点)

筆者作成

なぜなら、YouTubeは差し込みの広告が再生されなければ収益を得ることができないビジネスモデルなので、継続的に投稿できるか、改善していく力があるチャンネルかどうかを最初に与える課題で試しています。そのため、時間をかけて一つひとつYouTubeから出される課題をクリアすることで、多くのユーザーをチャンネルに誘導してもらえます。

立ち上げたチャンネルに勢いをつけるため、広告を出したり、著名人を出したりすれば立ち上げのブーストをかけることはできますが、先ほど説明したように、立ち上げ当初に“ブースト”しすぎると、その後、それを継続できなくなり、失速してしまう可能性があります。

基本的にYouTubeチャンネルの活用方法は2つに分かれていて、短い期間で成果をあげなければいけないプロジェクトに関しては、既にファンを抱えているカリスマYouTuberとのタイアップを推奨します。長期的に、より戦術を用いて大きな成果を生み出すためには自社のチャンネルが必要です。その場合は結果が出るまで辛抱する必要があります。PDCAは図2のとおり、企画制作と改善を繰り返していくイメージです。

図2 YouTubeチャンネルの分析改善PDCA

筆者作成

「まずはやってみる」の精神で

次に、動画を制作する際の具体的なノウハウについて解説します。長期的な視点で考えたとき、「継続のしやすさ」が重要な鍵になってきます。とにかく、まずは動画を制作し、実際に公開してみてください。そして、公開した動画に関連する数字を分析してみてください。「YouTube アナリティクス」で、閲覧数や流入元といった様々な指標を簡単に閲覧できます。

各種指標の読み方などは調べれば簡単に分かりますので、本稿では説明しません。まずは、1カ月30本を作成していただきたいと思います。すると、どんなコンテンツが支持されやすいのかという傾向が見えてきます。

例えば、釣りのコンテンツを制作しており、海釣り、川釣り、渓流釣り……といろいろ試してみるとします。そのうち、渓流釣りの動画の反応が特に大きいことが分かったら、渓流釣りのコンテンツを増やしていきましょう。このように、PDCAをどんどん回していくことが重要です。

友だちに感じるような「共感」を

実は、カリスマYouTuberと呼ばれる人たちの多くは、強いカリスマ性や特別なスキルを持っていないことの方が多いのです。YouTubeの世界では、何かしらのプロフェッショナルよりも、ごく普通の若者のほうが成功しやすいという傾向があります。それは、視聴者が求めているのが友だちに感じるような“共感性”だからです。

例えば、理科の実験動画をつくる際、大学教授や研究者など権威ある人たちよりも、理系の大学に通っている大学生がつくるコンテンツのほうが支持されやすいのです。それは視聴者が「共感やつながり」を求めており、出演者や同じ動画を視聴しているユーザーとの一体感を醸成することが必要だからです。

出演者のSNSのフォロワー数やチャンネルの登録者数が増えると、コメント欄やSNS上で小さなコミュニティができます。視聴者はその一員になっているような気持ちになり、出演者やファン同士の交流を楽しみます。もし、企業として動画マーケティングに取り組むのであれば、プロジェクトを成功させるために「視聴者の共感が必要」ということを念頭に置いていただけたらと思います。

かつて、4Gの普及で「これからはスマホ」という声があった一方で、「スマホで販促なんてできない」という声がありました。結果はどうでしょうか。現在は、スマホを使わない販促などありえない状況になっています。それと同様に、今後5Gが普及することが確実な状況で、消費者はより気軽に動画を視聴するようになります。今からでもすぐに動画を活用した販促に取り組み、ノウハウを積み上げていく必要があります。

りる氏

1996年生まれのZ世代。大学在学中に独自のYouTubeアルゴリズム分析に基づくノウハウでYouTuberのプロデュースを手がけ業界でその実績が話題に。その後インターンでマーケティング会社勤務などを経て2019年6月にYouTubeの企画・制作・分析・コンサルを行うLuaaZを創業。大手流通企業、出版社、玩具メーカーなどのYouTubeマーケティングを支援。

広がるオンライン接客 「非接触」の販売促進手法の記事一覧

広がるオンライン接客 「非接触」の販売促進手法の記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
販促会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する