店舗での接客機能をオンラインに移行した場合、どのような評価をすべきか。また、顧客の満足度を高めるために従来型のセールスとどうすみ分けるべきか。小売などの覆面調査を多数手がけてきた専門家が、チェックポイントを解説する。
今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、企業・店舗・来店客それぞれの行動が制限され、これに対処するためオンラインでの接客が急速に拡大しています。
その手法としては「ネット上の店舗のお問い合わせフォームで、オペレーターがリアルタイムにチャット形式で問い合わせに応える」「オペレーターに人ではなく、AIチャットボットを使う」など様々な種類がありますが、ここではZoomなどを使った「顧客とスタッフの映像・音声をリアルタイムにつなぎ、画面越しに接客すること」について述べていきます。
「第5の営業手法」が登場した
「オンライン飲み会」という言葉がたった2カ月で定着するほど急速に普及した背景には、そのツール自体の普及があります。Zoom、Google Meet、LINE、Skype、Wherebyが主に使われているツールですが、どれも面倒な設定なしに無料で始められることから、コロナ禍をきっかけに広く使われることとなりました。PCがなくともスマートフォン1台で、誰とでも対面で話すことが可能になったのです。つまり、ツールの普及が、オンライン接客で対応できる可能性のある顧客の幅を広げたのです。
コロナ禍以前からネット通販の利用は増加傾向にありましたが、“ソーシャルディスタンス”が習慣化してからは「買い物の外出頻度を減らすため」という理由も加わり、接触回数を減らしたいという心理が働いていると考えられます。
そのような状況、心理のなかで接客を受ける意義は何かと考えたときに、そのニーズは顧客によって様々ですが、やはり「しっかり説明を受けたい」というニーズが大きいのではないでしょうか。つまり、接客の場がオンラインになったとはいえ、オフラインと変わらない接客サービスを提供することが必要と考えられます。いわば、第5の営業手法と言えます。
対面とオンラインの違い
新型コロナウイルスが流行する以前には、一般客に対するセールスは、主に以下の4つの手法を使い分けていました。
(1)対面
(2)電話
(3)メール
(4)郵送
それぞれメリット・デメリットがあり、その使い分けはスタッフや組織の戦略によって変わります。そこに今回、さらなる新たな選択肢のひとつとして、オンライン接客が登場してきたというわけです。
手法ごとに、特徴や伝達できる情報を図1にまとめました。これまでにオンライン接客やオンラインセールスなどを体験したことがある方ならお分かりかと思いますが、実際に触ってみることが必須の商品セールス以外では、顧客として受け取る価値や利便性は特段変わらないと感じたのではないでしょうか。むしろ、移動が不要になるため時間効率の向上を実感することも多いと思います。
ここからは、対面接客とオンライン接客の違いを中心に考察していきます。オンライン接客の特徴、対面接客との違いについては図2にまとめました。メリットが多くある一方で、注意すべき点もあります。
✔ 形がある商品を触ったり、体験したりすることができないこと
✔ 最適な話し方や間の取り方、表情によるコミュニケーション手法が異なること
✔ 顧客が情報を受け取る準備をする必要があり、その設備やリテラシーが個人によってばらつきが大きいこと
✔ 基本的には飛び込み対応はなく、事前にアポイントを設定すること
✔ 居住エリアや距離は一切不問となること
✔ 直接接触しないため、感染リスクがまったくないこと
Point1
顧客のITリテラシーを確認
まず、“今回接客する顧客”がどのような設備(通信環境やデバイス)でどの程度のITリテラシーを持っているのか、見極めて利用する必要があります。BtoBのオンラインセールスはPCを使うことを前提としていることが多い一方で、BtoCの場合にはPCだけではなく、スマートフォンを利用するケースが多くなります。
Point2
一方的な「視聴者」にさせない工夫を
次に、セールスする側が顧客から受け取る情報が制限されることを認識しておく必要があります。例えば...