2019年にスマホアプリを導入するなどDX化を進めていたくら寿司(大阪府堺市)。新型コロナが外食業界に大きな影を落とす中、テイクアウトの売上が好調だ。予約・注文・会計までをタッチレスで完結させる仕組みづくりを目指している。
5月の売上は8割まで回復
──全店売上高は2020年2月までの4カ月間プラス成長が継続していましたが、3月からは新型コロナウイルスの影響で落ち込んでいました。現状はいかがですか。
外食業界は大きなダメージがあり、最も影響のあった4月の既存店売上は前年の5割ほどまで落ち込みました。ただ、5月には8割まで回復しています。店内飲食の売上が大きく減った分、テイクアウト比率が非常に大きくなっているんです。緊急事態宣言が段階的に解除されてからは、営業時間を短縮していた店舗も、順次通常営業(11時~23時)へと戻しています。
客席から「スマホで注文」が拡大
──Withコロナの時代になり、感染予防の面で“非接触”でのサービス提供が求められます。客足が戻りつつある中、どのような取り組みを実施していますか。
くら寿司では、2019年7月からスマホアプリを活用した「スマホdeくら」を導入しています。お客さまの来店時・持ち帰り時の「ユーザビリティ向上」と店舗側の「オペレーション軽減」の両立を目指して開発したサービスです。これが、幸いにもコロナ禍でプラスに作用しました。
特にお客さまからご好評をいただいているのが「スマホで注文」機能です。注文時に使用する席に備え付けのタッチパネルとお客さまのスマホを連動させることができ、ご自身のスマホから商品の注文が可能になっています。メニューから商品を選択し、シャリの大きさや数量などを選んで注文する仕組みです。現在、250店舗に導入しています。
店舗ではもちろん、お客さまが替わるたびにタッチパネルのアルコール消毒を行っているのですが、それでも「タッチパネルに触るのは避けたい」というお客さまもいらっしゃるためニーズが高いのだと思います。安心してご来店いただけるような仕組みづくりが求められるようになっていると感じています。
元々、「スマホで注文」機能は全店舗への導入を5年計画としていました。古い機種のタッチパネルではスマホと連動できず、機種の交換が必要だったからです。ただ、この機会に一気にタッチパネルの交換を進めており、2021年10月までには全店舗で利用できるようになります。
──コロナ禍でアプリの利用者が増加することで、One to Oneマーケティングも促進されますね。
そうですね。これまでは利用促進のために、スマホから注文をすると「ビッくらポン!」(5皿ごとに1回挑戦でき、グッズが当たるゲーム)の当選確率が2倍になる、寿司だけでなくサイドメニューでも500円ごとにビッくらポンができるなどのメリットを訴求してきました。その結果、新型コロナ直前の利用率は約2割となっていましたが、その後急増しています。
スマホでの注文はアプリ会員のみが利用できるサービスのため、将来的にはOne to Oneマーケティングに活用していきたいと考えています。例えば、個々のお客さまの好みに応じておすすめ商品を表示したり、来店回数や間隔に基づいて適切なタイミングで来店を促進したり、といった施策も考えられますね。
事前予約による入店が9割に
──回転寿司チェーンでは、来店客どうしの接触を避けるために待ち時間の短縮も課題です。店舗に滞留させないための対策はありますか。
すでに競合他社でも導入しているものですが、当社でも「スマホdeくら」内で会員向けに時間指定予約を導入しています。アプリ内の「スマホでテーブル予約」を押して店舗を指定し、人数や日時を選択するだけで完了します。あとは指定の時間にご来店いただければ、待ち時間なしで入店できます。
この仕組みの難しいところは、スマホから予約された方と飛び込みで来店された方の入店比率をどうするか、という点です。他社では、予約客を4割程度で運用しているところもあるようですが、当社では混雑時には店舗の約9割を予約のお客さまとしています。
予約率が高いと、飛び込みのお客さまがなかなか席に案内されないというデメリットもあります。ただ...