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広がるオンライン接客 「非接触」の販売促進手法

ポストコロナを見据えた店舗型サービスの変革 「6つの壁」を乗り越えるには?

松井拓己(松井サービスコンサルティング)

あらゆる顧客接点が「密」から「疎」へと移行しつつある現在、ポストコロナの店舗型サービスは今後、どのように変革していくべきか。サービス改革の専門家によれば、改革実行に向けて6つの壁があるという。

ポストコロナに向けて、「密」を避けるライフスタイルやワークスタイルへのシフトは、サービス事業への大きな打撃となっています。

サービスは、顧客と一緒につくる「共創」が大切です。これまで、共創の多くは顧客との直接の「密」な接点で行われてきました。顧客接点が「密から疎」になることは、価値を共創する機会の減少を意味します。直接接点が持ちにくくなるコロナ禍において、苦悩している企業が多い状況です。

加えて、顧客との関係性までも「疎」になってしまう恐れがあります。そのような環境下で、サービスの姿、サービスの価値、そしてサービスの設計(モデル)をどのように捉え直していくのか。そんなプロジェクトが、各社で始まっています。

言うまでもなく、サービス価値や顧客との関係性の低下は、じり貧の価格競争や顧客離れを招きます。コロナ禍が長期戦となるなか、あらゆる業種で売り方やサービス提供方法の転換が必要となっています。その変革のひとつのカギが、今回の特集テーマである「非接触コミュニケーション」というわけです。

サービス品質は6つに分解して考える

ポストコロナに向けて「非接触」を前提としたコミュニケーションへのシフトが加速するなかで、サービスの質や評価はどのように変わっていくのでしょうか。サービスの品質は「正確性」「迅速性」「柔軟性」「共感性」「安心感」「好印象」という6つに分解して考えることが大切です。

生産と消費が同時に行われるサービスは、「そのとき」「その場」でなければ利用できないものがたくさんあります。これが非接触コミュニケーションやデジタル技術により「いつでも」「どこでも」利用できるようになれば、正確性や迅速性、利用シーンの柔軟性の向上が期待できます。一方で、対応の柔軟性や共感性、安心感や好印象は、対面のコミュニケーションが得意な領域であり、非接触コミュニケーションへのシフトにより品質が低下する恐れがあります。

近年「モノからコトへ」「交換価値から経験価値へ」サービスの価値が変化してきました。これはサービス品質でいうところの成果品質(正確性・迅速性)からプロセス品質(柔軟性・共感性・安心感・好印象)へ重点がシフトすることを意味します。非接触コミュニケーションによりこのプロセス品質が発揮できなければ、サービス全体の評価を大きく損なうことになりかねません。

論理的な満足と感情的な満足の違い

もう少しサービスの評価について論理的に理解を深めたいと思います。ビジネスである以上、評価されれば何でもいいわけではありません。事業成果に強力につながる評価と、そうでないものに、明らかな分岐点があります。

例えば、顧客満足とリピートや推奨の意向との関係です。「やや満足」と答えた顧客の97%が離反の可能性が高く、成果につながるのは「大満足」のみという調査結果があります。さらには、大満足の理由には2つの種類があります。「このコストパフォーマンスなら納得だ」というように、頭で考えた論理的な大満足。「すごく助かりました」「心が温まりました」と心で感じた感情的な大満足の2つです。

このうち、論理的な大満足は、実は「やや満足」よりも、リピートや推奨の意向が低いと分かってきました。つまり、感情的に大満足した顧客をいかに増やせるかが、成果への分岐点なのです。これを心得て取り組むことが、サービス改革成功への一歩です。

ポストコロナに向けて顧客接点を疎かにしたり、非接触コミュニケーションに切り替えたりするなら、なおのこと、感情的な大満足につながる接点を見出し、工夫をしっかりと組み込まなければなりません。そのポイントは「共創型」「探索型」「積上型」の3つです。

共創型

冒頭で説明した通り、サービスは顧客と一緒につくるものです。これまでのサービスに多かった、顧客の依頼に「受身型」で応えるだけ、あるいは良いと思うサービスを一方的に推してしまう「提案型」のサービス提供では、顧客に喜んでいただくことは困難です。サービスをつくるプロセスに顧客が参加し、双方向に刺激し合いながらサービスをつくり、高めていく「共創型」の要素の強化が必要です。

探索型

昨今、モノも情報もサービスもあふれ、自分自身のニーズが分からない顧客が増えています。そこで必要になるのが、顧客が抱えている問題やニーズを探し出すところからご一緒する「探索型」のスタイルです。サービスの同質化が進み、メニューや機能では差が付きにくくなったいま、「探索型」で顧客がニーズを見つける前に差別化するサービスが増えています。

積上型

サービスは生産と消費が同時に行われるため、サービスの姿、顧客の情報や行動は、その場限りで消えてしまう部分がたくさんあります。これらを見える形にして活かすことで、顧客がサービスを利用したりリピートしたりするほどに、サービスが個客に合わせて「積上型」で進化していきます。時間を味方に付けてサービスの価値や顧客との関係性を積み上げていけば、顧客ロイヤルティが向上し、顧客基盤が高まります。

ポストコロナを見据えたサービス改革

いま、ポストコロナを見据えて各社が実に様々な取り組みを進めています。その中で、「非接触コミュニケーション」に関連するサービス改革テーマをいくつか紹介します。

分かりやすいように、改革のポイントを2つの観点で整理します。1つ目は、顧客との価値共創は直接接点が中心であり非接触コミュニケーションは補助的な役割のものと、非接触コミュニケーションを中心にして価値を共創しているもの。2つ目は、サービス改革のアプローチがサービスプロセスの改善なのか、サービスモデル自体の再構築にまで及ぶのか。これにより、顧客接点におけるサービス改革は4つの方向性に分かれます(図1)。

図1 ポストコロナに向けたサービス改革テーマ例

筆者作成

A:事前期待の的を変える(左下)

3密を回避する工夫をしつつ...

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