6月30日、経済産業省のキャッシュレス・ポイント還元事業が終了した。総務省によるコード決済サービスの統一規格「JPQR」普及事業も進むなか、コロナ禍での“非接触”ニーズから、キャッシュレス決済の動向が注目されている。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、消費者の行動も変化しつつあります。感染拡大を防ぐために、人と人との接触をできるだけ避けようと生活している環境下で、キャッシュレス決済はどのように捉えられているのでしょうか。
各業界で「キャッシュレス」推進
厚生労働省は、2020年5月4日に新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を公表しました。その内容によると、日常生活の中に取り入れる実践例として、買い物時の「電子決済の利用」を挙げています。
また、小売業系の業界団体が公表した「小売業の店舗における新型コロナウイルス感染症 感染拡大予防ガイドライン」においても、「キャッシュレス決済の利用を促進する」と記載されています。小売業だけではなく、外食業、旅行業、文化施設などにおいても同様の記載があるガイドラインが公表されています。
このように、様々な業種でキャッシュレス決済が注目されています。各国でのキャッシュレス決済比率は図1のとおりです。こちらは2017年と古いデータですが、政府が公表するキャッシュレス決済比率は2018年に24.7%となっています。
こんなに変わるレジの処理時間
現金支払いの場合、代金が消費者から店員へ、そしてお釣りが店員から消費者へ渡されます。現金の受け渡しについても、カルトンやトレイを積極的に使うようにしている店舗も増えましたが、まだ手渡しの場合も多いと思われます。受け渡しの際に、消費者と店員が近づく必要性があり、場合によっては接触する可能性もあります。
さらに、現金は転々流通するものであり、お店でやりとりする現金が、これまで誰が触れてきたものかも分かりません。従来でも、飲食店などにおいて現金の受け渡しを行った場合、食事の提供など次のアクションに移る前に、手を洗う、消毒するといった作業を行っていたかと思います。その結果、時間のロスも発生していました。キャッシュレス決済であれば、このような接触機会や時間を削減することも考えられます。
人と人との距離を確保するようになったことから、レジには長い行列ができるようになりました。滞在時間を短くし、行列を減らすためには、レジの回転率を上げる必要があります。ジェーシービーの調査では、現金よりもキャッシュレス決済の方がレジの処理時間が短くなるという実証実験結果も公表されています(図2)。特に電子マネーに代表される「かざす」だけの非接触型決済のスピードは早く、レジの回転率の向上にも大きく貢献すると考えられます。
このように、消費者と店員の接触を避け、距離を取った支払いを実現し、消費者の店舗滞在時間を短くするためにキャッシュレスの有効性が着目されています。
コロナ禍では、「リモート」も注目されています。ステイホームやテレワークなどで、自宅にいる時間が増えた消費者も多いと思います。その結果、買い物にECなどを利用する人々が増加してきていると感じます。EC取引での支払いはキャッシュレス決済の利用が非常に多く、こういう面でもコロナ禍がキャッシュレスの利用拡大に影響を与えているともいえます。
キャッシュレス決済の3つの方式
さて、キャッシュレス決済と一口に言っても、様々な方式があります。ここでは、大きく消費者と店員のやりとりの観点から3つに分類して説明していきます。
ひとつは、クレジットカードなどに代表される、プラスチックなどのカードを決済端末に通してお支払いをするパターンです。消費者は取引時にサインや暗証番号の入力が求められますが、サインをする際には店舗が提供するペンを、暗証番号を入力する場合は店舗に備え付けられている入力端末を利用します。
これらペンや入力端末は不特定多数の方が触れるものともいえるため、衛生面から見ると不安があるかもしれません。また、日本では慣習的にカードを店員に渡し、店員が決済端末に通すことが多く、カードを介した接触という点も懸念されます。ただ、最近では消費者自身がカードを決済端末に通すことも増えており、このような接触機会を避けることができるようになってきています。
二つ目は、電子マネーなどに代表される、カードやスマートフォンなどを決済端末にかざしてお支払いする方式です。タッチ決済や非接触決済と呼ばれています。この方式では、端末に触れることなくお支払いができます。また、クレジットカードのタッチ決済であっても、一定金額以下の場合、サインや暗証番号の入力は不要です。
海外では...