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世界の広告会社に見る 新事業・ビジネスモデル

成長する海外クリエイティブエージェンシーが拡張してきたのは「体験創出」機能

博報堂 志水雅子

長年にわたって確立されてきた広告会社のビジネスモデル。しかし、デジタル化やグローバル化を背景に、そのビジネスモデルは大きな転換を迫られています。メディアバイイングを中心とした従来型の広告ビジネスの枠に捉われず、新しいビジネス(収益源)を創出し、メディア環境・コミュニケーション環境が変わっても揺らがないビジネス基盤を構築することが、規模を問わず多くのエージェンシーにとって課題になっています。

ビジネスモデルの変革、あるいはそれを目指した新規事業の創出に積極的な海外エージェンシーの取り組みにスポットを当てながら、日本の広告会社のこれからの姿を考えます。

メディアバイイングを中心とした強固なビジネスモデルを確立し、成長を遂げてきた日本の広告会社。しかしその成長も、デジタル化やグローバル化を背景に鈍化しています。変わりゆく市場環境の中、これからの広告会社はどんな価値を提供していけばいいのでしょうか。海外の広告界で見られる動きをレポートするとともに、国内の広告会社が参考にできるポイントを解説します。

モントリオール本社の「SID LEE ARCHITECTURE」。建築事務所さながらの佇まい。

博報堂DYホールディングスの戦略事業組織「kyu」は、専門性と先進性を継続的にグループ内へ取り込むことを目的に、2014年に組成されました。今年6月、kyu傘下の各社に博報堂のスタッフやkyuの東京スタッフが派遣される「kyu Maru Exchange Program」がスタート。この一環で私は3カ月間、カナダ・モントリオールに本社を持つ広告会社、SID LEEのトロントオフィスに派遣されました。

SID LEEは、kyu傘下の企業の中で唯一の広告会社で、デザインや体験創出に強みを持ちます。今回は、SID LEEという海外エージェンシーのビジネスの現場で実際に働いてみて体感したことや、トロントオフィスのトップであるVitoPiazza氏から聞いたこと、また本社オフィスを訪問して見聞きしたことを踏まえ、私自身の考察を交えながら「海外クリエイティブエージェンシーの事業形態に見る、日本の広告会社の成長可能性」をテーマにお話ししたいと思います。

クライアントに提供するのは「広告」だけではなく「体験」

日本において「広告会社はビジネスモデルを変革する必要がある」という議論が行われるとき、それは主に「メディアバイイング中心のビジネスからの脱却」を意味すると思います。そして、海外のエージェンシーが、それをいかに実現しているのかということに関心を持つ人は多いのではないでしょうか。

ここで注意しなければならないのは、欧米の独立系クリエイティブエージェンシーは、そもそもメディアバイイング中心のビジネスではないということ。クリエイティブとメディアは1980〜90年代にかけて分岐し、基本的には別会社となっています。日本の「総合広告会社」というあり方のほうが、世界においては特殊だと言えるのです。

SID LEEはフィー制のビジネスを行っています。スタッフのランクごとに時間単価が設定されており、稼働時間に応じてフィーをいただく仕組みです。アイデアやサービスにいかに付加価値をつけ、その単価を上げていくかが重要と言えます。SID LEEでは、その価値を高めるために、クライアントの「Creative Business Partner」になることを目指しています。

「Business」が入っているのがポイントです。クライアントのビジネスを拡大・成長させるパートナーとしての信頼を得て、関係を築き、提供するサービスの価値を高めない限り、クリエイティブエージェンシーとしての成長も望めないのです ...

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