顧客や知名度の獲得、他社との連携、社員数の増加と社内コミュニケーション……。起業から間もないベンチャーの経営には、様々な壁が待ち受けているもの。その課題解決の一助となり、成長に貢献してきた広報活動のモデルケースを紹介する。
※ いな川宏樹社長の「いな」は魚へんに弗と表記
イベント登壇で人脈を広げる
ベトナムや中国など世界15地域、1万人のエンジニアにアプリ開発などを依頼できるプラットフォーム「セカイラボ」を運営するモンスター・ラボ。深刻な人材不足に陥るIT業界のニーズを確実にとらえ、パソナテックをはじめとした大手企業との提携案件も後押しし成長を続けている。そんな同社が専任広報を配置したのは2014年。セカイラボをローンチし、この認知拡大を加速させる狙いだった。
「それまではサービスに関するプレスリリース配信のときだけ人事担当部門などが兼務で行っていました。ただ、セカイラボのローンチに伴い、より深く経営トップの考えや事業のコンセプトを理解した上で、ステークホルダーに伝えるための手段や具体的なメッセージ内容を戦略的に組み立てられないか、との思いから専任広報を配置しました」とモンスター・ラボ 代表取締役社長のいな川宏樹氏は振り返る。
同年5月には、椎葉育美氏が広報として着任。目指すのは長期的な視点でビジネスに貢献できる広報だ。ベンチャーの広報では、メディアとの関係構築をとかく重視しがちだが、椎葉氏が取り組んだのは、ベンチャーキャピタル(VC)や大手企業の新規事業担当者など業界のキーパーソンとのネットワークづくりだった。
「年間1800人近くの方と会い、キーパーソンをいな川につなげてきました。この人脈の中で、ピッチイベントやIT関連の展示会などで登壇する機会をいただき、メディアに取材してもらえるチャンスにも恵まれました。広報はよく『片足は社内に、片足は社外に』と言われますが …