顧客や知名度の獲得、他社との連携、社員数の増加と社内コミュニケーション……。起業から間もないベンチャーの経営には、様々な壁が待ち受けているもの。その課題解決の一助となり、成長に貢献してきた広報活動のモデルケースを紹介する。
10億円の資金調達で注目
スモールビジネス向けのクラウド会計サービスを提供するfreee。2015年、SBIホールディングス傘下のSBIインベストメントが設立したフィンテック分野に特化したファンドから、第一号の資金調達となる10億円を獲得したことでも話題に。クラウド会計サービスではトップシェア、投資家の熱視線を集めるフィンテック市場のけん引役として成長を続けているベンチャーだ。
一方、今でこそ盛り上がりをみせるフィンテックだが、freeeが創業した2012年当時は会計にITを活用するという考えは一般的ではなく、むしろ機密性の高い情報をクラウドに預けることに不安を感じる人も少なくなかった時期でもある。新たな分野を開拓した企業として、freeeはどのように社会的な地位を確立し、ユーザーの支持を獲得していったのだろうか。
Twitterから口コミで話題に
「創業時はまだサービスも完成していませんでしたから、PRはおろか、起業家同士のミートアップイベントにも参加せず、ひたすら見込み顧客へのヒアリングと開発に取り組んでいました」と、freee 代表取締役の佐々木大輔氏は振り返る。
それでも「freeeが目指し、つくりだそうとしている方向性は、間違いなく世の中に求められている」と佐々木氏は確信していたという。2012年11月にベータテスト版をリリースした際、freeeには特定の熱狂的な“ファン”の存在があった。
「中小企業や個人事業主の会計手段について、以前からその煩雑な作業に疑問を抱いていた人は少なからずいたはず。ところが『会計とはそんなもの』と諦め、不満を漏らす人は多くなかったように思います。freeeは、スモールビジネスに携わるすべての人を、そうしたムダから解放し、創造的な活動にフォーカスできるようにしたいと誕生したサービスです。freeeのファンになってくださった方々がそうした私たちのフィロソフィーに賛同してくれ、ムーブメントができていったという感覚があります」。
その証拠に少しずつではあったが …