ベンチャーの広報担当は知名度や期待値を高めるという重要なミッションを抱える一方、目標設定や効果測定に悩む場面も少なくないだろう。スタートアップのPRに携わることも多いビーコミの加藤恭子氏は「点から線につなげる広報を目指すべき」と指摘する。
ベンチャー企業にも、広報活動の重要性が広まりつつある。私がヒアリングをした企業では、専任もしくは兼任の広報担当を置いたり、外部のPRコンサルタントを招いたり、担当者が勉強会に参加して知識を高めるなど、様々な取り組みをしているところが多くあった。そのような中、どんな活動をしたらいいか、どんな目標を設定して取り組んだらいいかと悩んでいるケースも多い。本稿ではベンチャー企業の事例を見ながら、いくつかの指針と活動アイデアを示したい。
他社との差別化のため「ひねる」
「季節の行事を意識した広報活動をしましょう」とよく言われる。例えば、バレンタインデーやエイプリルフールなどだ。だが、既に多くの企業が行っていることをまだ知られていないベンチャーが後追いで行っても埋もれてしまう。そこで必要なのが「ひねり」を加えることだ。
オリジナルのTシャツがつくれると話題のサービス「tmix」を提供するspice life。同社は皆がバレンタインネタのプレスリリースを出す中、2015年2月2日に「『花粉のない沖縄で働きたい』社員の一言から新制度を導入」というプレスリリースを配信した。
内容は、花粉症で悩んでいる社員の一言がきっかけで、パフォーマンスを高められる仕事環境を提供するため、リモートで働く制度を開始するというものだった。結果として著名なネットのニュースサイトに複数の記事が掲載されたほか(ガジェット通信、ねとらぼなど)、アイティメディアヘルスケアでは、同社を追加取材して記事となり、制度のきっかけとなった社員も写真入りで登場した。さらには、テレビの夕方のニュース番組でも取り上げられた。季節感のあるネタでも、まだ他社が使っていないような切り口をピックアップしたことによる成功例である。
「逆張り」で差をつける
チケット再販サイトを運営するベンチャーのチケットストリート(当社クライアントでもある)は、3つの差別化を図っている。1つめは、当面はチケット再販の認知度を上げるため、「ネガティブな文脈であったとしても露出を目指す」点である。チケット再販はまだ新しい分野で、ネットオークションと混同されたり、サービス自体を知らないという人もいる。つまり、今は「こんなサービスがある」と知ってもらうことが重要な時期だ。そのため、ネガティブな文脈であってもとにかく露出を促すようにしている。
2つめは、「何かあった時に、記者に思い出してもらい、業界のご意見番のように意見を聞いてもらえるポジションを目指す」だ。昨秋、 …