「マスメディアへのPRだけでは勝てない」とされる中国では消費者にいかに「体験」の機会を与えられるかがポイントだ。現地のプロモーション、PR事情に詳しい徐向東氏が解説する。
2013年秋にオープンした、世界最大のグローバル旗艦店 「ユニクロ上海店」(撮影:徐向東)
後手に回る日本企業の広報
中国における日系企業の広報活動は未成熟で、広報よりもテレビなどへの広告投資を重視している企業が多いというのが現状だ。もちろん「一定量以上の広告出稿が可能な企業は、力のある大企業である」というお墨付きにはなるわけだが、ブランド選択や商品購入の決定打にはならない。ましてや、P&Gやユニリーバといった欧米企業などは日系企業をはるかに上回る広告投資が可能という中で、同じ土俵に立つのは厳しいというのも事実である。
そうなると、中国市場で消費者の購買行動に結びつけるためには、PRで情報を広げていく流れを設計する必要がある。日本のメーカーは商品力があり品質も良いが、ブランド力は圧倒的に弱く、認知率が低い。それもそのはず、たった15秒のテレビCMでは日本製品の持ちうる複合的な機能価値が伝わらないからだ。
中国は日本より市場の状況が複雑で混沌としており、市場の開放度も日本より大きい。自国ブランド以外にも、欧米系や日系、韓国系、台湾系、そして海外のブランドに似たような、実はコピーである商品もあふれている。商業に関する法・制度は良くできているが、100%守られているとは限らない。
しかも中国最大の国営テレビ局である中国中央電視台のようなメディアであっても、マッチポンプのような報道が見られることもある。このような状況なので、消費者は信頼できる人からの口コミに頼らざるをえない。農村地域ではテレビの影響力は健在かもしれないが、購買力のある都市部や富裕層にとってのテレビは「ネットコンテンツを見るためのモニター」という位置づけである。
ネット依存度が高い中国
私が中国の消費者調査に携わる中で改めて感じているのが ...