複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを100専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
「リスク広報最前線」は2015年9月号から連載を開始し、連載100回目を迎えることができました。「危機管理広報」という日の当たりにくかったジャンルに興味・関心を抱いて、ご愛読いただいている読者の方々のおかげです。ありがとうございます。今回は、約10年間の「危機管理広報」の変遷を振り返りながら、現在のトレンドを解説します。
図 危機管理広報、覚えておきたいポイント
①危機管理広報は当たり前の時代
②開示や法令に基づく公表・報告義務と危機管理広報は違う
③信頼回復の手段として活用する
④企業価値を向上する「攻めの広報」として用いることができる
⑤ガバナンスが機能していることを伝える機会となる
⑥日頃の広報活動においても、企業メッセージを示す
1.危機管理広報は当たり前の時代
この10年での最も大きな変化は、「不正や不祥事を起こした企業は危機管理広報をするのが当たり前」という意識が世の中に定着したことです。
最大の要因は、2016年2月に日本取引所が「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」を策定し「迅速かつ的確な情報開示」を上場会社に求めたことです。ただし、厳密に言えば、…
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